どこまでも勝ち続ける。楽天岸孝之投手(33)がソフトバンク打線を5安打1失点に抑え、13年以来5年ぶりに自身8連勝を飾った。直球と変化球の緩急にとどまらず、直球の中にも強弱がついた投球で今季4度目の完投。4連勝で後半戦9勝1敗と快走を続けるチームをさらに加速させた。気が付けば5位オリックスとは3・5ゲーム差まで迫っている。

 質のよい岸の直球は、何物にも代え難い。今宮に甘いチェンジアップを二塁打され、1点を奪われた8回無死二塁。「あそこでズルズルいって、あっちの雰囲気がよくなるのが嫌だった」とギアチェンジ。上位3人を直球でなで切り、唯一のピンチを切り抜けた。「今週は1人でいけたらと思っていた」。7回途中7失点で降板した前回登板の借りを返すべく、狙っていた完投を果たした。

 捕手の嶋が証言する。岸の直球は「低いと思うのが上に上がってくる感じ。真ん中が高く感じる」。きれいなバックスピンがかかり、垂れない。振ればバットの上を通過し、見逃せばストライクゾーンから落ちない。加えて「去年よりカーブはブレーキがかかっている。真っすぐが生きてくる」。鬼に金棒状態だ。

 直球にも強弱がついた。1回先頭の上林には、143→144→145と1キロずつ球速を上げ、最後は115キロのカーブで三振。4回の松田宣には140→143→146と3キロずつ上げて二飛。5回の福田は141→144→146と5キロ上げた後に、126キロのチェンジアップで腰砕けの三振。岸は「そんなことしてない。たまたまです」と言うが、嶋は「強弱をつけないと9回は投げられない。追い込んだら力を入れたり、抜いたりしてると思う」と話した。

 8連勝で岸は9勝1敗となったが、チームも後半戦に入って9勝1敗と絶好調だ。序盤にまったく機能しなかった打線が、後半は1試合平均6・5得点。岸も「初回から点数を取ってくれ、その流れに乗れた。気持ち良く投げられた。何とか粘っていれば、点を取ってくれる」と感謝した。投打がかみ合い始め、5位オリックスには3・5ゲーム差。平石監督代行は「まだまだ。浮かれるつもりはない」と引き締めた。【斎藤直樹】

 ▼岸が5月2日日本ハム戦から8連勝。岸のシーズン8連勝以上は西武時代の13年に9連勝して以来2度目になる。2球団で8連勝以上を記録したのは、岩隈が近鉄時代の04年に12連勝、楽天時代の08年に8連勝を2度マークして以来、10年ぶり。西武時代は9連勝が最高の岸だが、楽天では連勝をどこまで伸ばすか。