今年も山賊打線で勝つ。昨季リーグ王者の西武が、29日の開幕戦で対戦するソフトバンクに13安打、11得点で大勝した。3回、栗山巧外野手(35)がバックスクリーンへ3ラン。6回には山川穂高内野手(27)が満塁本塁打を放った。試合前に、内海哲也投手(36)が左腕肉離れで離脱。打って打って、ベテランの開幕ローテーション落ちという暗い話題を吹き飛ばした。

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13年前の傷痕残る右手で、バットにボールを乗せた。栗山は3回の第2打席、カウント2-2から武田のスライダーを捉えた。宿敵ソフトバンクを4点差に突き放す3ランを、125メートル先のバックスクリーンへ運んだ。「キャンプからやってきたスイングを出せるようにするだけ。もっと磨き上げていかないと」。開幕カードと同じ相手、同じ場所。「7番指名打者」で先発し山賊打線を切れ目なくつないだ。

埼玉・所沢での残留練習から合流したばかり。ベンチでハイタッチする右手のひらには長さ3センチの手術痕が残っている。06年8月1日ロッテ戦。日本ハム清宮と同じ有鉤(ゆうこう)骨を骨折した。空振りした際に「グチャってなった」と嫌な感触を覚えながらも「空振りで退場したらめちゃくちゃ格好悪いので思いっきり振りました」。左中間最深部へ満塁弾としたが「右手がないんじゃないかというくらい…痛かった」。翌日登録抹消でシーズンを終えた。

タフネス列伝を持つチーム野手最年長は試合前、左人さし指で傷痕をなぞりながら、同じ運命をたどる16歳年下のスラッガーを思いやった。「清宮君に関して言えば、まだ今でよかったと思う。8月とか、本塁打王争いをしているタイミングじゃない。1カ月半くらいあればバットは振れるようになる。1つ言えることは、骨を取ってしまった人には、いつ折れるか分からないリスクはなくなる。僕にはもうないですから」。変わらぬパワーが何よりの証しだ。

先発投手陣に不安要素が重なっても打てば勝てる。「この時期、結果を求めすぎてスイングが小さくなるのはよくない。キャンプで自分の形をつくってきた。勝負勘をしっかりとつくってシーズンに入っていきたい」。山賊打線には栗山がいる。【栗田成芳】