中日が23年ぶりとなる旧本拠地ナゴヤ球場での1軍戦を白星で飾れなかった。DeNAの3投手に4安打の完封負け。

長嶋巨人が“メークドラマ”を完結させた96年10月6日以来の1軍戦だった。翌97年からナゴヤドームを本拠地にしたため、ナゴヤ球場は2軍が使用していた。

29年前、ナゴヤ球場でプロデビュー戦を飾った与田監督も寂しげな表情をのぞかせた。

「この球場でプロ野球人生をスタートさせた。ここで試合が行えたのは思い出深かった。勝ちをファンに見せたかった」。かつての内野2階席、外野スタンド、ナイター照明もない。だが指揮官の青春が詰まった聖地。オープン戦とはいえ敗戦に肩を落とした。

それでも竜党にとっては、たまらない1日だった。2月上旬に発売されたチケット約3500枚は完売。全席自由席のため、一番乗りは午前4時半から並んだ球場近くに住むファン歴30年の河原潤さん(43)だ。「ここは選手が近い。話し声が聞こえるぐらい。今日に限っては勝ち負けは二の次」と、興奮を隠しきれなかった。

開場前に約1100人が列をつくったため、30分繰り上げられて午前10時半に開門した。近隣対策で鳴り物は禁止されていたが、3504人のファンは最後まで声援を送り続けた。

10日の名古屋ウィメンズマラソンがナゴヤドームを使用する影響のため、開催された奇跡の試合。既に来年の開催も検討されている。この日は敗れたが、竜のメークドラマはシーズンでの戦いへ先送りされた。【伊東大介】