阪神西勇輝投手(28)が2年連続、タテジマでは初の2桁勝利に王手をかけた。勝利の瞬間、誰よりも熱くベンチで手をたたいた。

「チームから負けたら終わりと聞いていたんですけど、本当に負けられない試合で先発させてもらって。無事、長いイニングを消化出来て良かったです」

初回、菊池涼に先制ソロを浴びたが顔色一つ変えず。打者を抑えれば、激しくガッツポーズを見せた。負ければCS進出消滅の一戦で、8回5安打2失点。気迫の104球だった。

2-2同点の8回無死二塁。勝ち越しの好機で西はそのまま打席に立った。矢野監督は「西の姿を見て、野手がどう気持ちが変わってくれるかを期待して、ずっと続投してもらっていた」と意図を説明。三塁へ送ることは出来なかったが、続く北條が勝ち越しの決勝2ランを放った。「正直、泣きそうでした」と喜ぶ西の気迫が打線に伝わった。

オリックスからFA加入1年目。期待通りチームトップの9勝を挙げ、今季167回1/3登板は、13年の166回を抜きプロ最長となった。それらの数字以上にチーム内での存在は大きい。

6日の広島戦。高橋遥が4回で降板し、ベンチで矢野監督から“公開説教”を受けた。目を赤くした後輩を、西は翌日も気に掛けていた。「ちょうど朝ご飯が一緒で、何か悩みがあるなら聞こうと思っていたけど、意外とケロッとしてたから大丈夫かなと思った」。前日20日の練習中にも、2人で話し込む姿があった。「あいつ、1人で背負っているように見えた。ピッチャー全体で戦えばいい、と」。ここ4試合勝ち星が遠い高橋遥の重荷を、優しい言葉で下ろそうとした。

次回は28日のDeNA戦(横浜)が濃厚。レギュラーシーズン最終登板になる可能性が高く、10勝をかけた1発勝負になりそうだ。「監督が次行けと言えば行きますし、チームの兼ね合いもある。クライマックスシリーズの権利が残っているなら行きたいです」。逆転CSを信じ、背番号16も準備を整える。【磯綾乃】

 

 

阪神福原投手コーチ(西について)「最初にホームランを打たれたけど、そのあとは頑張ってくれた。先発陣を引っ張ってくれている。ヤギ(青柳)や(高橋)遥斗とかに声を掛けてくれている。2桁勝利もある。1年間やってるんで頑張って届いてほしい」