金本&新井超えだ! 広島会沢翼捕手(31)が9日、鹿児島市の最福寺で護摩行を行った。燃えさかる炎に向かって約1時間30分、経を唱え続けた。4年連続4度目の行は自らを成長させる大事な儀式だ。池口恵観法主(83)も精神的な成長に目を細めた。頼れるコイの兄貴が、チームの絶対的支柱となる。

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叫ぶような読経だけでなく、「気」で、眼前の炎に立ち向かった。会沢は燃えさかる炎の前で約1時間30分、己と闘い続けた。「弱い自分が必ず出てくるので、どう向き合うか。自分と闘っている」。自分自身のことだけでなく、家族のこと、カープのことを思いながら行を耐え抜いた。

護摩行を始めてから成績が安定してきたのは偶然ではないだろう。1年目の17年は愛娘から「唐揚げが顔に付いてるよ」と指さされるほどの痕が残ったが、チームは連覇。ベストナインにも選ばれた。18年も再び優勝とベストナイン。昨年は4連覇を逃したものの、自身初の規定打席到達で3年連続ベストナインに選ばれた。

「気持ちがより一層入る。(シーズン中も)苦しいときが必ずある。そこで1歩、1歩と踏み出す心の気持ち、それを鍛えていただける」

4年での変化を最福寺の池口法主も感じている。「やる気が違う。前へ前へ進んで行っている。まだ伸びますよ」。気力については、過去に護摩行を経験した金本氏や新井氏と比較しても「超えてきたんじゃないですか」とうなずいた。石原とともに「闘球克己(とうきゅうこっき)」という言葉を送った。「野球を闘うには自分に勝たないといけない。捕手は全体を見られないといけないので、己に勝つ」という意味がある。

円熟期を迎えた31歳も、成長の歩みを止めるつもりはない。昨季は規定打席に到達した打撃面ではリーグトップの得点圏打率3割5分1厘を残した。「打率も得点圏打率も出塁率もこだわっていきたい。あとは東洋さん(朝山打撃コーチ)も言っていたけど、どれだけ“生きて死ねる”か」とすべての面での成長と献身性ある打撃を追求していく。

成績だけでなく、欠かせぬ精神的柱となった。今季は選手会長の立場でなくなっても先頭を走り続ける。「引くというつもりはまったくない。今まで通りチームのことは見ていきたい」。さらに強くなった広島の兄貴が、王座奪還の旗振り役を担う。【前原淳】

◆護摩行とは インド伝来で密教最高の修行法。轟々と燃え上がる炎の前で、全身全霊を込めて不動真言を唱え祈りをささげる。すべての煩悩を焼き尽くすという意味がある。