大学球界屈指の左腕対決を制したのは、早大・早川隆久投手(4年=木更津総合)だ。法大・鈴木昭汰投手(4年=常総学院)とリーグ戦初の投げ合い。ドラフト上位候補同士、互いに0を並べたが、9回に早大が敵失からつくった好機をものにした。早川は、4安打無四球13奪三振で初完封勝利。鈴木は8回2/3、10安打2失点で敗れたが、自責点0、三振は同じ13を重ねた。

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最後の打者に左飛を打たせた早川は、グラブを掲げ控えめに喜んだ。「完封しようとは思いませんでした。勝てる投球をしようと」。開幕戦の明大戦は9回2死から点を失い、目前で完封を逃した。小宮山悟監督(55)から「ドラフト1位指名の選手がリーグ戦の完封がないと格好悪いだろう」とハッパを掛けられた。「その通りだな」と思いはしたが、狙いはあくまで勝利。その結果の完封だ。

法大・鈴木との投げ合いについて聞かれ「優勝しか見てません。相手がどうあれ、自分ができることをやる」と即答した。走者として3度出塁。7回には、鈴木の投球が捕手の前方にこぼれると、果敢に三塁へ滑り込んだ。小宮山監督は「今日も素晴らしかった」と“も”を強調。早川は「今日は忘れ、明日も準備します」。連勝のため、優勝のため、早くも切り替えた。

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マウンドを降りた鈴木の目は真っ赤だった。9回2死二、三塁。打ち取ったはずの打球は、捕球した二塁手の一塁送球がそれてセーフ(記録は内野安打)。0-0の均衡を破る生還を許してしまった。「こんなゲームになることは投げる前から分かっていた。結果がすべて。悔しいです」。

鈴木は初対決の早川をこう評した。「自分の実力よりすばらしい投手。でもチームとして勝ちたかったです」。138球を投げた。10安打を浴び、毎回のようにピンチを背負った。それでも最速149キロの速球にチェンジアップ、スライダーを交えて8回までホームを踏ませなかった。奪三振13。早川と同数だった。

「球の走りは悪くなかった。1人1人に勝負していく。それがつながった。ピンチをしのげたのは、次につながると思います」。左腕エースは、この悔しい経験が残り試合に生きる、と言い聞かせた。

▼西武渡辺GM(ネット裏で観戦)「早川君の評価は今更、変わらない。来年、プロの1軍で見るのが楽しみ。鈴木君は気持ちが入っていた。プロ向き。腕が振れて、内角も攻めきれる」