6月19日、おかんに届け-。巨人坂本勇人内野手(32)が甲子園にメモリアルアーチをかけた。1点リードの6回2死、阪神伊藤将の133キロスライダーを左翼席に8号ソロ。プロ15年目で史上65人目の通算250本塁打に乗せた。14年前のこの日、母輝美さんが病気で他界。おかんが見守る地元・兵庫の空へ思いを込めた1発を放った。

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雨をためた曇り空を優しく見上げた。坂本が一振りに思いを込めた。「節目のホームランはタイガース戦がすごく多い。おかんも喜んでくれているんじゃないですか」。1点リードの6回2死、阪神のルーキー左腕を捉えた。内角低めに入ってきた133キロスライダーをバットに乗せた。プロ1号、同100号、同200号到達はいずれも阪神戦。“地元”甲子園を悠々と周回した。

プロ1年目の07年。大好きなおかんが旅立った。幼少期から多大な影響を受け続けた偉大な存在だった。昨季11月の2000安打達成後に「1軍で1本もヒット打っている姿を見ないまま亡くなってしまったんですけど、どこかで見てくれてると思って。一番、小学生のころから応援してくれたのは母親なので、今日もどこかで見てくれているのかなと思います」と思いをはせた。おかんを思い、おかんへの感謝と報告が無限の力を生む。

おかんへの思いがこもった大切な6月19日。命日の試合は7試合目で通算28打数10安打、打率3割5分7厘、2本塁打、7打点の大活躍が続く。名球会入りを果たし、大打者の仲間入りを果たした今年は11年西武戦に続くアーチを届けた。記念ボードを天高く掲げ「250本も打てると思いませんでしたし、ホームランバッターじゃないから、1本でも多く打ちたいなという気持ちで日々やってます」とスタイルを貫いた。

プロ15年目、1826試合で1本ずつ積み上げ、未来を切り開いてきた。個よりチームを重んじ、勝利至上主義の伝統を引き継ぐ。首位阪神を7ゲーム差で追う主将は本塁打の魅力を「まあ流れが変わったり、チームの勢い出てくると思う。もちろんそこ(チームが勝ったこと)が一番よかった」と言った。おかんに届けたメモリアルアーチが坂本の未来を照らす。【為田聡史】