8回裏終了時、「ピッチャー、藤浪」がコールされると、甲子園に駆けつけた虎党がどっと沸き立った。4月中旬の新型コロナウイルスの感染から復活した阪神藤浪晋太郎投手(28)が、約1カ月半ぶりに1軍戦のマウンドに帰還。敗色ムードに包まれていた場内の空気を、一瞬で変えた。

「投球自体はあまり良くなかったですが、(長坂)拳弥にも助けられながら抑えることができました。次回登板に向けてしっかり準備して、いい投球ができるように頑張ります」

最速158キロの直球を軸に、中継ぎとして与えられた役割を見事に全うした。2点ビハインドの9回に4番手で登板。1球1球の投球ごとにどよめきが起きる中、先頭外崎をフルカウントからの9球目、外角低め144キロカットボールで空振り三振。1死から滝沢には四球を許したが、岸へ投じた3球目、外角にワンバウンドしたボールを捕手長坂が好捕し、一塁走者が飛び出していたところを刺して2死。岸には追い込んでから粘られるも、最後は156キロ直球で二ゴロにねじ伏せ、結果的に3人斬り。復帰戦を1回無安打無失点と好投で飾った。

競馬界のレジェンドの活躍に勇気づけられた。5月29日に東京競馬場で日本ダービーが行われ、合同自主トレを行うなどかねて親交のある武豊騎手(53)が前人未到のダービー6勝目を飾った。メンタル面など助言を受けたことがあり「すごく尊敬している人が、ダービーという大きいレースで、ああいう勝ち方をするのはすごい刺激になりますし、うれしかった」。レース後は「おめでとうございます」と連絡し、「ありがとう。やっぱダービーは別格だね」と返事があったという。レースから2日後、感化された右腕は帰還を遂げた聖地で好投につなげた。

浮上の鍵を握る背番号19が、快投連発でチームをもり立てていく。【古財稜明】

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