現役時代に阪神でプレーした日本ハム新庄剛志監督(50)は16年ぶりに帰った甲子園で、凱旋(がいせん)勝利を逃した。序盤から万波の先制二塁打&10号ソロなどで大量リードを奪ったが、今季最大6点差の逆転負け。それでも最初から最後まで、今季最多4万2574人のファンを楽しませる“BIGBOSS流”の野球を展開し、「明日はこれの逆を」と明るくリベンジを誓っていた。

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最大6点あったリードは、いつの間にか、なくなっていた。7-7の8回1死満塁。堀が勝ち越しを許す押し出し四球。新庄監督が、投手交代を告げた。試合後のBIGBOSSは「負けたのは、うちの実力不足なんだけど…。まあ、今日、来てくれたファンのみんなは、ものすごい面白いゲームだったんじゃないかな」と、今季最大の大逆転負けを冷静に受け止めた。

89年ドラフト5位で阪神に入団。プロ生活をスタートし、甲子園で育った。最後の聖地は現役引退した06年の交流戦。阪神のユニホームで練習し、自らも満喫し、ファンも沸かせた。そして監督として16年ぶりに帰ってきた。

試合前には「『わぁ、広かね。甲子園は。福岡から来た新庄剛志です』って言ったの思い出しました」と、故郷の博多弁を交えて、入団時を懐かしんだ。

この日の甲子園の観衆は、今季最多4万2574人。BIGBOSSは試合開始直前、阪神矢野監督とのオーダー表交換を終えると、本塁付近から真っさらなマウンドへ向かって数歩、歩いた。甲子園のどよめきを背にダイヤモンドの中心に立つと、帽子を取り、かつて何度も見上げたバックスクリーンへ向かって、深々と一礼した。「ありがとう。帰って来ました。監督として帰って来ることが出来て、今日は良い試合を見せます」との思いを込めたという。「この大歓声の中で、ずっと(試合を)やっていたんだなって。じーんと来るものがありました」と、心を震わせた。

凱旋試合の初戦は、突然、暴れ出した猛虎打線を抑えきれず、悔しい逆転負け。それでも「10年間、育てられた球場で、いい試合は出来た」と前を向き「今日やられたので、明日はこれの逆を。また面白いゲームをしたいですけど、心臓がやられちゃう」と、明るくリベンジを期した。【中島宙恵】

◆新庄BIGBOSSの前回の甲子園 06年4月にこの年限りでの現役引退を発表して迎えた阪神との交流戦。5月18日の試合前の外野シートノックに、阪神のユニホーム姿で登場した。中堅でゴロを捕球すると豪快にバックホーム。ファンを沸かせてノリノリだった。事前に阪神球団に問い合わせ、保管してあったタテジマのユニホームを快く譲ってもらったという。試合では「日本ハム」に復帰し、5番中堅で1安打を放つなど白星に貢献。だが翌19日、セ・リーグから「練習は同じユニホームでやるものだ」と厳重注意を受けた。新庄は「もうしません」と笑顔で謝罪した。

5月の1試合が雨で流れ、6月19日の古巣戦が現役ラスト甲子園。中堅の定位置に就くと芝をつかみ、フッと空に吹き上げた。6番中堅でフル出場して4打数2安打。最後の打席は久保田に空振り三振したが、甲子園で487試合プレーしたスターを両軍ファンが大拍手で送った。