泰然自若といったところか。
阪神大山悠輔が1試合3発を決めた3日の日本ハム戦。最も目立たなかったはずの「残り1打席」が妙に印象に残っている。まだ4点を追う6回無死一塁。上沢直之を相手に、1度もスイングすることなく一塁へ歩いたシーンだ。
この打席、5番大山は3打席連発がかかっていたというのに、驚くほど落ち着いていた。
初球から2球連続で外角スライダーを静かに見逃して2ストライク。ここから4球連続でフォーク、ストレート、フォーク、フォークと際どいボール球を見極めた。最後の2球は高めのフォークにやや反応しかけたが、余裕を持ってストップしている。
狙い球でなければ、やみくもにがっつかない。状況を考えて、自身の数字よりも走者をためる判断を優先させる。そこに「主砲のあるべき姿」を感じ取ったのだ。
ちなみに無死一、二塁に好機を拡大した打線はこの回、2点を追加。8回には背番号3の3発目から4得点して、大逆転劇を完成させている。主砲のフォア・ザ・チームの精神が勝利につながった、と表現しても差し支えはないだろう。
大山は今季、バッテリーとの駆け引きを課題の1つに挙げている。
「今まではどうしても来たボールを打つ、という感じがあった。今年はまだ少しずつですけど、そういう部分を頭に入れながらやっています」
昨季まではどちらかと言えば、初球から打てそうなボールはどんどん振っていくイメージが強かった。結果、ボール球の変化球を振らされるケースも少なくなかった。
それが今年は明らかに違う。イメージと違うボールが来れば、狙い球を悟られないように静かに捨てる。読み通りのボールが来れば、一振りで仕留めにかかる。主砲らしい不気味な迫力が増している印象だ。
本人は一貫して認めないが、4月下旬に左脚を負傷した影響もあり、打率が2割台前半をうろつく時期が続いた。それでも焦らず狙い球を絞るスタイルを貫いてきたから、打点だけは着実に積み重ねられてきたのだろう。
そして先週末の日本ハム3連戦、大山はいよいよ確変モードに突入した。計10打数で4本塁打を含む7安打、7打点。甲子園に凱旋(がいせん)した新庄剛志BIGBOSSから主役の座をかっさらった形だ。チームをカード3連勝に導き、3日連続でお立ち台へ。何よりその打席内容に進化の兆しが見え隠れする。
最大6点差をひっくり返した初戦は、すべてファーストスイングで3発。2戦目もファーストスイングで先制&決勝打。3戦目は思わず相手指揮官も拍手をしてしまうほどの3ランを放ったが、これも2スイング目での特大弾だった。「配球を読む力」が向上しているのは間違いない。
「もっともっとレベルアップしたい。ワンランク、ツーランク、それよりも上に行きたいと思ったら、変わっていかないといけないと思うんです」
シーズン開幕前にそう強調していた大山は現在、交流戦12球団最多の6本塁打。まだまだ長い階段を上っている最中にすぎないのかもしれない。【遊軍=佐井陽介】



