ペナントレースも折り返し地点を過ぎた。2軍では若手選手たちがシーズン中の1軍昇格を目指し、炎天下で励む。

プロ2年目のロッテ西川僚祐外野手(20)は昨年と同じように三振が多いものの、今年は夏を前に長打が一気に増えてきた。スラッガーとして将来を期待される右打者に、オンラインインタビューで手ごたえを尋ねた。【取材・構成=金子真仁】

  ◇  ◇  ◇    

6月30日の夕方、すっかり日焼けした西川は、汗をふきながら「すいませんっ!!」と精悍(せいかん)な顔つきでオンライン上に現れた。

その1時間ほど前に、ベンチ前で笑顔が弾けていた。イースタン・リーグの日本ハム戦(ロッテ浦和)。育成選手、山本大斗外野手(19)がサヨナラ本塁打を放った。同期入団、同じ外野手、同じ右打者。ライバルの活躍にも、悔しい気持ちはなかった。

「試合に勝ったことは一番大きいです。うれしい気持ちもありますし、自分ももっと打ちたい、負けてられない気持ちも。あらためて頑張ろう、というのが出てきました」

仲間の成功を、混じり気のない笑顔でたたえる。東海大相模(神奈川)時代からの明るさ、前向きなハートはプロでも健在だ。

とにかく明るい。とにかく振る。プロ1年目の昨季はイースタン・リーグの最初の12試合で20打席10三振。2年目の今季は同期間で44打席16三振。「自分の納得いかない、簡単に言えば内容の悪い三振。何もできていない、バットを振りにいけていない三振も多かったと思います」と五里霧中の春が2年続いた。

だが、今年はちょっと違う。5月に入ると安打が目立ち始め、開幕当初は1割少々しかなかった打率が、7月4日時点で2割2分9厘をマーク。取材直前の12試合は23打数9安打で打率3割9分1厘。三振はわずか3つ。安打9本のうち本塁打1本、二塁打4本と打ちまくった。

「6月に入ってからの三振は、去年や今年の始まりとは内容が違うというか。ぎりぎりまでしっかり投手と勝負して。手も足も出ない三振ではなくなってきていると思います」

外角の見極めに苦労し、高めをうまくさばけなかった昨季。その2点にも大きな改善があり、先輩スラッガーの井上晴哉内野手(33)をほうふつさせる高弾道も増えてきた。

「自分の打てるスライダーのイメージができたり、直球も外側がまだ遠く感じたりする日もありますけど、しっかりコースに逆らわないで打ててるんじゃないかなと思います」

この突然の変化には何があったのだろうか。

「フルスイングでとにかく遠くへ飛ばすことを、朝の打撃練習からやっているので。打席でもどんどん振っていけるようになったのが一番の変化だと思います。1球1球とにかく、全球ホームラン狙って、打撃練習は試合と同じくらい思い切り振って」

通算55本塁打をかっ飛ばした東海大相模時代、兄が成田山新勝寺で買ってきた「勝」と書かれた木のお守りを太い首にかけ「何とかして勝ちたい」と必死のプレーの連続だった。2つあったお守りは高校の後輩にあげた。今は欲を強くせず、目の前のフルスイングだけに専念する。

「1打席に集中して、最後まで戦えれば結果もついてきますし、もっと自分のプレーの幅も広がると思うので。今は欲を捨てて、相手と、投手と勝負できればと思います」

そう思いを口にした次の日。イースタン・リーグDeNA戦(横須賀)の9回。西川はDeNA砂田のスライダーをフルスイングで引っ張った。場外へ消えていくような決勝2ラン。山本大斗ら仲間たちは喜び、最後は“アジャ”井上に尻をポーンと叩かれた。