連続奪三振を目指すなら9より10個を! 元巨人の江川卓氏(67=野球評論家)が、ロッテ佐々木朗希投手(20)の球宴初マウンドに向け「怪物エール」を送った。同氏は1984年(昭59)球宴で、江夏豊の持つ9連続奪三振の記録にあと1歩と迫ったが、8連続でストップ。実はこのとき、「振り逃げ」による10連続を狙っていた。39年越しの夢を「令和の怪物」に託す思いを日刊スポーツに寄せた。

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佐々木投手への私のリクエストは、ズバリ「連続奪三振」です。それも、9個ではなく10個を狙ってほしい。

まず、私の1984年の「8連続」について話します。球宴の少し前。今年1月10日に他界された漫画家の水島新司さんと食事をさせていただきました。そのとき「江夏(豊)さんの記録(9連続奪三振=71年)に並ぶだけじゃおもしろくないよね」という話題に。私が「振り逃げも三振ですよね」と言うと「そうだ、それだ!」。

9人目を空振り三振に斬った際に振り逃げで出塁させ、10人目の打者を三振に斬る、という秘策でした。8人目まではもくろみどおりでしたが、9人目の打者にカウント0-2からコツンと当てられてしまい(二ゴロ)、作戦は見せ場を前に失敗。振り逃げを狙って外角低めにワンバウンド気味にカーブを投げようとしたのが少し高めにいき、バットに捉えられたのです。

当時はすでに肩を痛めていたのですが、あの日は痛みもなく、直球もカーブも申し分なかった。ただ、記録への敵は「三振を取られまい」とする打者の警戒心と、バットを「振る」のではなく、「当て」にくる対応だった、と思うのです。

佐々木投手の場合も、セ・リーグの打者は普通にはバットを振ってこないと思います。その上でどうやって三振を取るか?

打者が振ってこないという前提なら、振ってくるところに投げるしかありません。好きなコースと苦手なコースは「背中合わせ」という打者の傾向を生かすのです。打者が一番得意とするコース付近に投げてバットを振らせるしか、三振を重ねる方法はないと考えます。コースのギリギリに投げて三振を取ろうとするのは、逆に難しいでしょう。

右手中指の回復具合もあり、長いイニングは投げないかもしれません。でも、160キロ超の直球にフォーク、さらに実演済み(7月1日、楽天戦)の振り逃げがらみの1イニング4奪三振。「夢」の10個へ、これほど素地と可能性を秘めた投手はいないと見ています。

 

<1984年球宴投球内容>

【4回】

福本(急)見三振(直)

簑田(急)見三振(カ)

ブーマー(急)空三振(直)

【5回】

栗橋(近)空三振(カ)

落合(ロ)空三振(直)

石毛(西)空三振(カ)

【6回】

伊東(西)空三振(カ)

クルーズ(日)空三振(直)

大石大(近)二ゴロ(カ)

※直=直球、カ=カーブ

※第3戦(ナゴヤ球場)に2番手で登板

◆江川氏公式チャンネル 現在、野球評論家だけではなく、ユーチューバーとしても活躍中。公式チャンネル名は「江川卓のたかされ」(https://www.youtube.com/channel/UCrmppJ31jdU7GDVupoSbl0Q)。同氏の座右の銘である「たかが野球、されど野球」から。松坂大輔氏、掛布雅之氏ら広い交遊関係を生かした球界OB、豪華ゲストとのトークのほか、自らの野球人生や野球の味わい方についても語っています。

▼オールスターの投手起用規定 82年第2戦で斉藤明夫が5回を投げているが、現行ルールでは3回を超えて投げることはできない。振り逃げがない限り、1試合の最多奪三振は9個となる。

 

<今季のロッテ佐々木朗奪三振メモ>

◆3月27日楽天戦 今季初登板でいきなり初回から2回まで5者連続三振。浅村の初球には自己最速を更新する164キロマーク。

◆4月10日オリックス戦 完全試合達成。初回から5回にかけての13者連続奪三振は日本新記録。1試合19奪三振は最多タイ記録。相手3、4、5、6番は全12打席三振。

◆7月1日楽天戦 初回に4奪三振。1番西川からフォークで空振り三振を奪うも振り逃げに。その後3連続三振とし、珍記録が生まれた。

○…佐々木朗は9者連続三振への意欲を問われると「それは、ちょっと期待しないでほしい」と苦笑いした。今季は完全試合を達成した4月10日のオリックス戦で13者連続三振の日本新記録を樹立。この日も「正直、たまたまだと思う」と振り返り、球宴でも大記録は狙わずに「結果的に取れるように頑張りたい」と自然体を強調した。