今季限りでの現役引退を表明している西武内海哲也投手(40)が19日、埼玉・所沢市内の球団施設で引退会見を行った。

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あの日、内海が左手の人さし指を天に掲げた理由を知ったのは、つい先日だった。巨人時代の12年8月17日の広島戦(東京ドーム)で完封勝利を達成した瞬間、天を見上げた。試合後、内海は「僕なんかより、由伸さんですよ」と300号のメモリアル弾を放った高橋由に触れ、笑った。

「実はね…」。内海の引退に際し、敦賀気比でチームメートだった谷出祐介さんは、あの日を思い出すかのように言葉をつまらせながら話した。

「完封勝利した前日、テツは(福井の)実家に来てくれて、『今日は一緒におっちゃんと寝る』とおやじのひつぎの隣で寝て、東京ドームに向かったんよ」

父晴彦さんは内海をかわいがり、内海は「敦賀の父」と慕った。先発に備え、帰京の予定だったが、訃報を知り、遠征中の名古屋から直行。一夜をともにし、早朝に自宅前で祐介さんとキャッチボールし、試合では形見の品をポケットに忍ばせ、勝利をささげた。

「あれは、おっちゃんに贈る1勝やから」

積み重ねた135個の勝利の中でも、特別な1勝。祐介さんの心に深く刻まれるとともに、内海のメモリアルグッズ「メタルフォトフレーム」にもそのシーンが描かれた。【久保賢吾】