「世界の村神様」不在でも、侍打線がつながりを見せた。「侍ジャパンシリーズ2022」のオーストラリア戦(札幌ドーム)で、昨夏の東京五輪決勝から日本代表戦で4試合連続本塁打中だった村上宗隆内野手(22)が欠場。栗山英樹監督(61)が蓄積疲労を配慮して決断した。

それでも村上の前後を固めてきた選手たちが躍動し、11安打9得点で快勝。来春のWBC本番に向け、有事にも対応できる打線の大枠が見えてきた。

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試合前練習から「世界の村神様」は姿をほとんど見せなかった。村上は練習冒頭のアップには顔を出したが、打撃練習などは回避。代表戦5試合連続本塁打の記録更新がかかった今シリーズ最終戦は欠場した。栗山監督は試合後の公式会見で「体が疲れ切っているので」と説明。日本シリーズまでヤクルトを引っ張ってきた疲労を考慮して、休養を与えたという。「何かあったわけではない」と、アクシデントは否定した。

村神様がいない侍打線となったが、有事に備えた貴重な試金石となった。

初めてジグザグ打線を採用した打線は2回に、6番西川、7番岡本和の連打でチャンスメークし、1番塩見が2点先制適時打。3回は3番山田が四球で出塁すると、代走で起用された周東が二盗を決め、3点目の起点となった。4回は2番近本の二塁打から代役4番を務めた近藤が適時二塁打を放った。中盤戦以降も攻め手を緩めず、4番村上不在でも、侍打線は9日までの3試合と変わらない爆発力を発揮した。

村上だけに頼らない、打線の新たなオプションが加わったのは大きな収穫だ。「これだけのメンバーがそろっていると、いろんな展開、形があると思う」と栗山監督。足が使えて勝負強い上位打線に、下位打線にはパワーヒッターを置く。「“死にイニング”をつくらないのが重要」と、対戦相手に常にプレッシャーをかけ続ける打線が理想型。体現できるメンバーもいるからこそ、「自分の判断を間違えないようにしたい」と、肝に銘じた。

全ては、4番に村上がどっしりと座ってくれたからこそ、攻撃の形が固まってきた。牧や岡本和の一塁起用など、「やっていないことは、今回しかできない」と、侍ジャパンならではのマネジメントにも収穫があった今シリーズ。世界一奪還を目指す打線の輪郭が見えてきた。【木下大輔】

▽日本栗山監督(9日までの3試合で4番を任せ、4本塁打を放った村上に) もちろん結果もそうですけど、僕的に『こういう感じか』と、思ったことが1つあって。なんで結果が残りやすいのか、というのが。それは何なのかと言うと、相手に分かっちゃうので。いいですね。楽しみにしてます。

○…10年間、指揮を執った札幌ドームでの戦いを終えると、栗山監督は「課題をつぶしていかないといけないところもたくさんある」と引き締めるように言った。同時に、手応えも多く残った。「収穫もものすごく多かった。選手の特長が分かった」。打順や守備位置のバリエーションは確実に増えた。投手が抑え、先手を取る野球の“王道”をいけば勝てると再確認できた。

今後は本戦に向けた選手選考を本格化させる。メジャーリーガーや国内の代表経験者など、今回は入らなかった有力候補も多い。「最終的にはギリギリになると思うけど、ピッチャーは準備が必要。12月のどこかで(WBCの)ボールを渡してあげる」と投手陣への配慮を示した。

○…大勢が9回を3者連続空振り三振で抑えた。9点差の大量リードの中、先頭から直球で押し込み、2者連続で3球三振に仕留めた。3人目は2球ボールを続けるも、ファウルと空振りで追い込むと、最後も直球で料理。最速は155キロを記録した。大勢は「プロ野球も(今シーズンが)今日で終わりなので自分なりに意識を持って試合に臨み、良い締めくくりができたと思います」と侍の守護神として1年の最後を締めくくった。

○…岡本和が“天井二塁打”で驚異的なパワーを証明した。2試合連続7番でスタメン出場。4点リードの5回1死、オーストラリア3番手ウィルキンスの147キロを左翼方向へ高々と打ち上げると、打球は天井に直撃した。左翼定位置手前にポトリと落下し、二塁を陥れた。この試合3安打2四球で5出塁。2試合合計5安打をマークし「このユニホーム着てもう1回プレーしたいなと強く思いました」とWBC本番への強い意欲を示した。

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