西武からの国内FA権行使を表明した山川穂高内野手(32)が19日、ソフトバンク入団会見に臨んだ。
ほとんどの西武ファンが「西武山川」の最後を見ていない。10月29日、宮崎・南郷スタジアムで行われたフェニックスリーグの中日戦。「3番一塁」でスタメン出場した。
7回、内角球を器用にさばいて左翼線への安打に。代走が到着するまで終始、一塁上で笑っていた。
「明日(のリーグ最終戦・広島戦は)出ないんで、フェニックスの最後の打席とは言われていたので。うまい感じで、うまく払えたんで良かったです」
取得したFA権への方針を表明していなかったが、世を騒がせた自身の不祥事を経ても、シーズン後すぐに「来季残留」と明言していない。熟考して表明こそ11月14日になったものの、10月末時点で行使はほぼ決定的とみられていた。
その試合、意味深なシーンもあった。記者が入れるスペースから、試合後のベンチ裏の様子が少しだけ見える。見えてしまう。この日で出場は終わり-。山川はゆっくりとユニホームを脱ぎ、トレーニングウエアに着替えることもない。白いTシャツに少しカジュアルなパンツに着替えた。
そしておもむろに、この日もかぶっていた西武のヘルメットを取り出した。迷わずに右斜め後ろを向いて、笑顔で「はい」。そこに居合わせた球場スタッフに渡していた。この日は同球場でのリーグ戦最終日。明日も使うからどこかに置いといて-。といった意味ではない。
キャンプなど長期間の練習サポートの御礼に、手袋やバットなど自身の用具を贈ることは珍しくはない。とはいえ、山川が選んだのはヘルメット。個人で各メーカーから買うものではなく、西武の野手が全員持っているもの。深読みだったかもしれないが、いろいろ感じさせられた。
翌日、予定通りに山川は試合に出なかった。ノックでも補助に徹し、試合中もベンチに座るのみ。広島のナックルボーラー坂田が投げ終えると、イニング間にベンチ前に登場し、ナックル限定のキャッチボールをした。試合が終了すると、ベンチ前での出迎えには登場しなかった。ネット裏にはソフトバンクの編成担当者が2人いた。
フェニックスリーグ優勝の記念写真でも、長身の羽田慎之介投手(20)の背後に隠れた。「フェニックスは若手が主役だから」という意味にも取れるし、どこか意味深さもある。
3週間のフェニックスリーグ。守りながら若手投手をもり立てる声は響き、最後はナックルも楽しそうに投げた。野球愛が随所に見えた。「楽しかったっすね。野球をやる喜びをもう1度、というところで、やっぱりどういう試合でも勝てばうれしいし、打てなかったら悔しいですし、それをもう一度味わえてるのがうれしく思います」と振り返っていた。
最後の試合から1カ月半以上、次に着るユニホームは慣れた西武のものではなかった。1対1で12分半、思いを口にした時以降、山川はまとまった言葉を報道陣に話さなかった。西武渡辺GMに連絡をしたのは、移籍発表2日前の17日だった。
けんか別れとも毛色が違う、釈然としないものが残る異例のFA移籍。19日、かつての主砲がようやく話したことに西武ファンはいったい、何を感じたか。あと3カ月少々で「ホークス山川」がいるペナントレースが開幕する。【西武担当 金子真仁】



