新人左腕の1球から巨人の今季が始まる。巨人ドラフト1位の竹丸和幸投手(24=鷺宮製作所)が開幕投手に抜てきされた。新人では65年のドラフト制導入後、球団初の快挙。さらに「エースのジョー」の愛称でV9時代を支えた元祖トルネード、城之内邦男以来64年ぶりとなる。開幕投手最有力だった昨季11勝の山崎が右肩の故障で離脱。実戦で13回連続無失点のルーキーが、大役に臨む。
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ある予感を持って、監督室の扉を開いた。14日、東京ドームでの練習後、竹丸は監督室の前に立っていた。先週末、開幕投手最有力だった山崎が右肩の不調で戦列を離れると発表されていた。「呼ばれた時に、ちょっと察していました」。かすかに緊張感を抱き部屋に入った。待っていた阿部監督から、決断が伝えられる。
「開幕行くぞ。思い切ってやってくれ」
「頑張ります」
短く、はっきり返した。
プロ入り後、目標に掲げたのは開幕ローテーション入りだった。実戦5試合で0を並べ、チーム最多となる13イニングを投げ抜いた。毎日を全力で駆け抜けた先に、思い描いた初登板を上回る大役が待っていた。
中学では3番手投手。球威、制球ともに他の投手に劣り、チーム内の実戦練習では、監督の指示でマウンドより2メートル手前から打者にボールを投げていた。同学年で練習に差をつけられる悔しさを味わってから、約10年。プロの舞台で開幕を任されるほどに成長した。
対戦相手は王者阪神。昨季8勝17敗と負け越し、2年ぶりの王座奪還へ、大きく立ちはだかる宿敵だ。「強いチーム。最初が大事だと思うので、もちろん勝ちたい」。父は大の阪神ファンで、連絡を入れると返ってきたのは「そうか」と一言だけ。「(応援してくれる)そのはずですよね。しなきゃダメですよね」と笑った。
マウンドでは表情を崩さず、淡々とアウトを重ねる。初実戦、初対外試合、多くのファンに囲まれながらも「緊張はないです」とさらり答えるポーカーフェース。プロ野球初年度の36年をのぞき、球団史上初の新人の開幕戦白星にも「勝ち負けに関しては運もあるので、あんまりこだわりすぎず。できることはしっかり」と冷静だ。一生に1度の大舞台でも、平常心でプロの扉を開く。【北村健龍】
◆新人の開幕投手 2リーグ制後は14人おり、22年北山(日本ハム)が最後。巨人では59年伊藤、62年城之内に次ぎ3人目になり、ドラフト制後では球団で初めてになる。伊藤は7回途中1失点で勝敗なし、城之内は5回2失点で敗戦。開幕投手で勝利したルーキーは58年杉浦(南海)を最後に出ておらず、巨人ではまだいない。



