ソフトバンクの宮崎「フリキレ!!」キャンプが1日、スタートする。キャンプイン前日の1月31日、チームは空路、宮崎入り。秋山幸二監督(46)は選手宿舎で行われた全体ミーティングで、王貞治前監督時代のシーズン監督指針を撤廃。わずか2分ほどの短時間に要点を凝縮した、リンカーン流の演説で、選手に「準備」の大切さを説いた。

 全体ミーティング開始からわずか10分ほどで、秋山監督は会場を後にした。会場内に王前監督時代には恒例だった「監督指針」は一切、ない。ホワイトボードに張り出されたのは、28日に発表された球団スローガン「フリキレ!!」だった。その説明を終えると、秋山監督は補足した。演説は、時間にしてわずか2分ほど。無駄な形容詞は除き、端的に言葉を連ねた。

 秋山監督

 ただ振り切るだけじゃダメだ。振り切るためには準備が必要なんだ。その辺を頭に入れて、行動してくれ。

 リンカーン大統領が3分足らず、272語で「人民の、人民による、人民のための政治」と説いた、あの「ゲティズバーグ演説」をほうふつとさせる簡潔ぶりだ。王前監督が06年には約40分の熱弁をふるい、昨年は長渕剛の名曲「乾杯」の歌詞を引用したのとは、まるで対照的だった。必要最低限の言葉で、選手に要点だけを伝えた。

 秋山監督

 指針はないよ。内容?

 内緒だよ内緒。準備だよ。準備をしっかりして、のびのびとね。

 「準備」の2文字がチーム再建のカギを握る。「シーズンでも故障者を出さないのが一番。思い切り振り切るために、全体的に層を去年より分厚くしてシーズンに入りたい」と森脇ヘッドコーチ。キャンプでの故障は、開幕に向けての調整遅れにとどまらず、シーズンの戦力低下にもつながる。キャンプを無事に乗り切る準備を整えることが、結果的にはチームの戦力アップへとつながるのだ。

 秋山監督の意向は練習メニューにも反映された。3日間の第1クールでは、チーム全体のシートノック、投内連係などは行わず、各部門で練習を行う。秋山監督は「選手も自主トレでやるべきことはやってきてくれているみたいだから、ここでしっかり基盤をつくる」と選手の自主トレの成果は確信しているが、第1クールは「準備」期間に充当。第2クール以降の本格的な実戦練習に備える方針だ。

 宮崎空港の歓迎セレモニーでは、約600人のファンに秋の優勝報告を宣言した。「このキャンプでしっかり基盤をつくって、開幕からいいスタートを切れるように一生懸命、練習します。秋には胸を張って報告できるよう、全力でシーズンを戦い抜きます」。ソフトバンクの新たな歴史を刻むキャンプが、いよいよ1日、スタートする。【中村泰三】

 [2009年2月1日10時59分

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