2軍調整中の西武ドラフト1位ルーキー雄星(18=花巻東)が、みちのくでプロ初勝利を挙げた。イースタン・リーグ楽天戦(Kスタ宮城)で先発し、5回を3安打無失点。三振は2つだったが、147キロを3度マークし、自身のプロ最速を更新した。5日で47歳になる工藤公康投手の練習パートナーとしてみっちり教えを受けた成果を出し、本来の躍動感を取り戻しつつある。原点回帰した東北の地で、師匠に1日早いバースデープレゼントを届けた。

 雄星が輝きを取り戻す日の到来を予感させた。「せっかく仙台で投げさせてもらえるし、気持ちを出していこうと。初めてまともなピッチングができました」。みちのく凱旋(がいせん)登板を、笑顔で振り返る表情がその証しだ。スタンド観戦した両親の前で、2軍戦とはいえプロ初勝利。充実の5回69球だった。

 1回2死二塁から楽天中川を遊ゴロに仕留めた球が、プロ入り後最速となる147キロを計測した。これまでの最速は144キロ。しかも高めに抜けた球。低めに決まった球で最速を出し、自信を深めた。4、5回にも147キロを計測し「スピードだけですけど、良くなってきました。正直、出そうと思った時は力入れてました」とうなずいた。

 3月から続く2軍生活の中で、5日47歳の誕生日を迎えた工藤に「オレが入団した時より、お前の方が上だ」と言われた。尊敬する大先輩からの言葉に勇気をもらった。始まりは“暖房係”だ。工藤の習慣である朝6時からのウエートトレーニング。いち早くウエート室に来て暖房をつけ、一緒に練習した。遅刻は1分1000円の罰金。「たまったお金で焼き肉を食べにいくんです」と、なぜかうれしそうだった。

 キャッチボール相手でもある工藤に、根本から矯正された。「お前はキャッチボールが下手だ。全力でキャッチボールをやらないと」「3000回はシャドーピッチングをやらないと、体は覚えない」といった金言を授かってきた。最近では、キャッチボールの締めは全力で投げ、褒められることもある。コーチ任せだったトレーニングメニューを、徐々に自分で考えるようになった。他人の倍はあるランニングメニューも、黙々とこなしてきた。

 顔のニキビが消えたのは、悩みが解消されつつあるから。「球種も増やして幅を広げないと。でも悩むことも楽しい」と余裕すら漂わせる。プロ入り前に体を大きくするために、と増やした体重も連日のハードな練習で12キロほど落ち、高校時代のベスト体重81キロに落ち着いた。ようやくかみ合い始めた歯車。自信という仙台土産を引っ提げて、雄星は所沢に帰る。【亀山泰宏】

 [2010年5月5日11時3分

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