<横浜3-13日本ハム>◇7日◇相模原

 日本ハムが伏兵のバットで横浜に連勝した。鶴岡慎也捕手(29)がプロ8年目にして、初の1試合4安打をマーク。2回に左翼への二塁打で好機を広げると、4回と6回にも左前打でつなぎ、8回に右翼へ初の2試合連発となる2号ソロを放ちとどめを刺した。1割台に低迷していた打率も、5月16日広島戦以来22日ぶりに2割台に。先発ボビー・ケッペル(27)は7回3失点で、チームトップの7勝目を挙げた。

 快打連発の対価は、きつい。鶴岡が晴れの1日の終わりに、散々な目にあった。三塁打が出ればサイクル安打達成という、プロ入り初の1試合4安打。「本当に今まで打てなさ過ぎたから」。そうヒーローインタビューで感慨に浸った直後に、悲劇が襲った。バスへの帰路で、今季途中までチームメートだった横浜江尻が待ち受けていた。

 バスタオル姿の半裸の右腕から、ケリを1発見舞われた。梨田監督からは「天気が下り坂になる」と因縁をつけられた。8日は羽田空港から新千歳空港への移動日。親友の田中は「最後の打席で打って(サイクル達成なら)同じ飛行機に乗るのをやめようと思って」と墜落の危機?

 まで感じていた。31試合ぶり2ケタ得点大勝の主役に、みんながおののいた。

 横浜も、チームメートも恐怖に陥れたビックリ仰天の大爆発劇は、完ぺきだった。2回の第1打席で二塁打、4回の左前打が序章だった。6回1死三塁では江尻から左前適時打を放ち、一挙4点のビッグイニングを演出。先頭打者の8回には右翼席へ2号ソロ。5日の巨人戦に続く3戦2発は、出場2戦連発の一撃。「毎日、新聞(で自身の成績)を見るのが憂うつ」という日々から解放された。

 開幕からトンネルに迷い込んだ。4月10日ソフトバンク戦で、今季出場10試合、27打席目で初安打。そこから簡単に抜けられなかった。チーム屈指のムードメーカーで努力家。試合後には特打を敢行するなどコツコツとスランプの出口を探し見つけた。福良ヘッド兼打撃コーチは打順変更の可能性について「どついたろか。ゼ・ッ・タ・イにない!」と完全否定されるオチまでついた。幸せを運ぶ“永遠の8番”は、定位置でまた光る時を待つ。【高山通史】

 [2010年6月8日10時53分

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