<阪神9-6ヤクルト>◇15日◇京セラドーム大阪

 「アニキ劇場」で首位を奪回した。阪神金本知憲外野手(42)がヤクルト戦の2回、天井直撃の打球がファウルと誤って判定されるアクシデントにもめげず、直後に打ち直しの1発を放った。7月19日以来のアーチは、17年連続2ケタ本塁打となる10号ソロ。1度は逆転されたものの、8回に再び金本が同点適時打から逆転勝利を演出した。金本は今季2度目の3安打で通算2341本とし、山本浩二(広島)を抜いて歴代13位に浮上。頼れる男の活躍でチームに勢いがついた。

 金本のための夜だった。クライマックスは1点を追う8回。無死一、二塁と一打同点の絶好機で、この日4度目の打席が回ってきた。「球宴が明けて仕事ができてなかったから」。積もり積もったうっぷんを、力に変えた。

 フルカウントからの6球目。外角低めのスライダーを強引に引っ張った。強烈な打球で一、二塁間を破る。二塁走者の新井が生還。試合を振り出しに戻した。一塁上では「オレに続け」とばかりに、次打者の城島を指さして猛ゲキを飛ばす。その気迫が城島に乗り移り、チームは逆転で8月初の連勝を飾った。チームも3日ぶりに首位返り咲き。その先導役を担ったのは、間違いなく金本だった。

 「金本ナイト」は、意外な形で幕を開けた。新井のソロで同点とした2回。アニキも続いた。ヤクルト先発バーネットの外角低めツーシームを、両腕を伸ばすようにして芯にあて、強引に右中間席へ運び去った。左腕をかぶせるように打った技ありの1発。7月19日広島戦(甲子園)以来18試合、67打席ぶりの10号ソロは、入団3年目から17年連続2ケタ本塁打の記念弾でもあった。

 実はこの本塁打。“アクシデント”を乗り越えての1発でもあった。その初球。金本が放った打球は右翼ファウルゾーンの天井を直撃し、フェアゾーンに跳ね返ってきた。グラウンドルールではインプレーとなっているが、一塁塁審坂井が早々とファウル判定をしたため、両チームがプレーを完全に中断。審判団の協議の結果、真弓監督の抗議も実らずに「ファウル」となって試合再開となった。

 9分21秒の中断中、当事者の金本も抗議に“参戦”しようとするが、他の審判団の阻止に遭い、断念。その間は1度もバットを振ることはなかった。ただ、再開直後のファーストスイングで本塁打。千両役者はやることが違う。「あまり言えないけど、いろんなミスがあった。結果的に本塁打になってよかった。待たされました」。主役は苦笑いで振り返った。

 「ケガがあって、なかなかチームに貢献できていない。今はうれしいというより、ホッとしています。(今後も)こういう日が増えるように頑張ります」。5月30日の日本ハム戦以来となる猛打賞に3打点の大活躍。チームを勝利に導いた主砲は力強く言い切った。【石田泰隆】

 [2010年8月16日11時0分

 紙面から]ソーシャルブックマーク