あの手この手禁じ手も使う!?

 中日の守護神・岩瀬仁紀投手(36)が「右打者封じ」に乗り出した。11日、ブルペンで変化球を解禁し、右打者対策として球界では「禁じ手」とされる内角へのシュートを試投。昨季はストッパー転向後、初めて右打者の被打率が3割超え。復権を目指す守護神は弱点克服にも妥協なしだ。

 快調にブルペン投球を続けていた岩瀬が突然、注文をつけた。「ちょっと、こっちに寄ってもらえますか」。藤井ブルペン捕手を右打者の内角へ構えさせるとシュートを投げ始めた。スピードのある球がベース直前で中へと切れ込む。制球を確認するかのように数球投げ込んだ。

 「使い方はこれから考えますけど、どっちかと言えば右(打者)を意識して投げました」。

 岩瀬は投球練習後、こう説明した。守護神が本格的な右打者対策に乗り出した瞬間だった。昨季の左右打者別被打率は左打者の1割4分9厘に対して、右打者は3割2分2厘と圧倒的に分が悪かった。阪神新井、巨人長野に3打数2安打など、痛打を浴びる場面が多かった。本格的にストッパーを任されてから右打者に3割以上打たれたのは初めて。史上最多セーブを目指す左腕にとっては放っておけない事態だ。

 だが、この日、試した右打者内角へのシュートは「禁じ手」と言われている。「長年やっているけど、ああいう要求をされたのは初めて。本人が考えてのことだろうけど、難しいボールだと思う」。受けた藤井ブルペン捕手が言うように通常、左投手のシュートは右打者の外角へ投げることが多い。制球ミスしてもボールになるからだ。逆に内角へのシュートは少しでも制球を間違えれば、ど真ん中に入ることになる。1球が命取りになるストッパーならば、なおさら、リスクの高い球になる。

 ただ、逆に言えば「禁じ手」を試してまで課題を克服しようという執念の表れでもある。今年のテーマにしていた直球に手ごたえを得たため、この日から本格的に変化球を解禁した。スライダー、ツーシーム、シュート。キレ、変化、制球とも満足だった。

 「ほっとしました。変化球はここ数年で一番いいかな。すべてにおいて」

 いつも慎重な左腕が珍しく自画自賛した。森ヘッドコーチからは不調ならば守護神交代の可能性を告げられている。不屈の守護神があらゆる可能性を模索しながら復権を目指していく。【鈴木忠平】

 [2011年2月12日10時24分

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