<オリックス1-9ソフトバンク>◇21日◇京セラドーム大阪

 ソフトバンク武田翔太投手(20)が4度目の先発で今季初勝利を挙げた。“与四球王”らしく5四球を出しながら要所で粘り、7回4安打無失点。2年目のジンクスをマイペース調整ではねのけた。両軍復刻ユニホームをまとった今カードを2勝1敗とし、借金1。勝率5割に再王手をかけた。

 たくさん勉強して、大人の1勝目を手に入れた。マイクを向けられた武田の顔はうれしさより、ホッとした安堵(あんど)の色が濃かった。「シーズンに入って調子が悪く、いろいろ悩みましたが、皆さんに支えられました。うれしいです」。2度も5回を持たず降板しながら4度目のチャンスをもらった。首脳陣、大量援護してくれた打線、スタッフに対する感謝の思いが口からあふれた。

 絶対的な安定感はない。5四球を与え、得点圏に4度走者を置いた。それでも要所を締め、本塁を踏ませない。取り組んだのは「重心を後ろに残しすぎるくらい軸足を意識した」フォームだった。試合中に制球が狂い始めると、腕を振ってカーブを投げて修正。6回、連打で無死一、二塁とした最大のピンチ。バルディリスを遊ゴロ併殺に打ち取り、代打深江には、細川のサインに首を振り、カーブでバットに空を切らせた。力みなく、低めに操った。

 2日前に武田と一緒にブルペンにこもった秋山監督は「やろうとしていることが結果に出ていた」と成長の跡を見てとった。8勝を挙げ、優秀新人賞をもらった昨年から一転、思わぬ出遅れだった。「2年目のジンクス」の文字がちらついた時、寮の自室に飾った「亀」の色紙を眺めた。「中学の恩師にもらったものです。亀のように焦らず、焦らず、自分のやることをやろうと。自分はウサギより、亀」。調整は変えず、投球のベースとなる下半身の使い方を我慢強く、探った。

 それでもこの日は清めの塩を持ち込んだ。焦りはあったはずだ。「この1勝が自分にとって自信になるといいです」としみじみ言った。移動バスのシートに身を委ねると、ぐったりした顔になった。リーグ最多19四球と“与四球王”の看板を抱えながら、もがき、考え、白星をつかんだ。3日に20歳になったばかり。まだまだ成長する。野球の神様は、武田に必要な、ほんの小さな試練を与えただけだろう。【押谷謙爾】