歴史的な一戦でWBC男に起死回生アーチが飛び出した。侍ジャパン吉田正尚外野手(32)がオーストラリア戦(東京ドーム)に「4番左翼」で出場。7回2死一塁で左腕のケネディから、逆転2ランを放った。WBC日本人最多となる4本目のアーチ。60年ぶりの「天覧試合」で“天下無双打線”の中心に座る男が伝説を刻んだ。
◇ ◇ ◇
吉田が鮮やかにすくい上げた。1点ビハインドの7回2死一塁。見送ればボール球かというような内角低めに沈む129キロスライダーをうまくバットに乗せた。打球は右中間スタンドに飛び込む逆転2ランとなり「みんな諦めてなかったと思いますので、勝てたことが一番良かった」。6回まで無得点だった場内の重苦しい雰囲気を一瞬にして払拭する確信歩きの一撃は、日本人最多となるWBC4本目のアーチのおまけ付き。スタンドは割れんばかりの大歓声に包まれた。
この日は66年11月6日の全日本-ドジャース戦(後楽園)以来、60年ぶりの「天覧試合」。すでに準々決勝進出が決まっていても、負けられない一戦だった。「天覧試合」と言えば、長嶋茂雄さんのサヨナラ本塁打が語り草。吉田も劇的アーチでミスターに並ぶ伝説の1ページに名を刻んだが「みんなでつかんだ勝利だと思います」と謙遜した。
WBCでの逆境の場面と言えば吉田の名前がすぐに浮かぶ。前回大会の23年WBC準決勝のメキシコ戦。3点を追う7回2死一、二塁から右手1本で放った右翼ポール際への同点3ランは名シーンの1つ。あれから3年。あの時の本塁打をほうふつさせる一打に「なんとか自分のベストスイングをしようと思って。それが結果的にホームランになったので、本当に運が良かったです」と喜んだ。
侍ジャパンは3戦全勝で1次ラウンドC組1位通過を決めた。ここまで全試合で4番を任されている吉田は「残り東京で1試合ありますけれども、そこも大事にしっかり戦っていきたいと思います。マイアミでも厳しい戦いが続くと思いますけど、本当に一戦必勝でみんなで力を合わせてやっていきます」。大谷、鈴木らのMLB組を中心に形成された“天下無双打線”の中心にはWBC男がどっしりと座っている。【水谷京裕】
▼吉田が2戦連続の逆転2ラン。吉田のWBCでの通算本塁打は4本目で、日本人選手では多村(横浜)中田(日本ハム)筒香(DeNA)大谷(ドジャース)の各3本を上回って単独最多となった。なお、大会の最多はデスパイネ(キューバ)の7本。

