大相撲の聖地、東京・両国国技館で先日、プロ野球の巨人のファン感謝祭が開催された。2年連続での両国国技館開催。この日ばかりは野球一色となる会場だが、今年もその盛り上げを手伝った人らがいた。

電光掲示板に書かれた「原」「辰徳」「菅野」「智之」「デラ」「ロサ」…。本場所中であれば、取組表が表示される電光掲示板に、巨人の選手名が「相撲字」で表示された。上段が姓、下段に名が書かれたプレートがずらり。今年もまた、日本相撲協会に所属する相撲字の本職の行司らが依頼を受けて書いたものだ。

作業は11月の九州場所前に行われ、約10人の行司らが3日かけて作った。そのうちの1人、十両行司の木村朝之助は「大変貴重な経験でありがたいことですね」と振り返った。ただ、作業はそう簡単なものではなかった。名前のベース書きを担当したというが「普段僕らが書くのはしこ名。例えば『○○山』とか『○○竜』とか、書き慣れたものばかりですけど」と、普段は書かない漢字やカタカナに難しさがあった。

また「何が難しいって、墨汁ではなくてペンキで書いたことです」という。墨汁だと電光掲示板に書いた時にはじかれる。そのため「ペンキをシンナーで少し割って薄めて書きました。薄めることで細かいラインも出てくる。筆の流れがつぶれなくなります」と職人技で仕上げた。

ベースを書き、それを別の行司が塗りつぶし、かわかし、最後には誤りがないように読み合わせまでを行った3日間。「みんなで一丸となってやる感じがよかったですね」と充実感をにじませた。

会場に集まった巨人ファンにもきっと、行司らの熱意は伝わったはずだ。【佐々木隆史】