ボクシングの名門ヨネクラジムが31日、最後の練習を終えて55年目の歴史に幕を閉じた。

 東京・目白のジムで午後6時から最後となった練習には、15人が参加した。このジム独特の一斉スタート練習で、通常通りに20ラウンドのメニューをこなした。63年3月にジムをオープンし、5人の世界王者を育てた米倉会長が高齢のために運営が難しくなり、一代限りと決断。4月に8月限りで閉鎖を発表していた。

 午後4時からの練習には2人だけの参加だったが、最後とあって家族や孫を連れたOBも加わった。町田トレーナーは「こんなにきたのは久しぶり」と笑みがこぼれた。元日本王者でトレーナーだった成田氏は、最近ボクシングを始めたという孫を連れてきて指導。「最後の日だから来ないわけにはいかない」と、いつものはちまき姿でミットを受けていた。

 世界に2度挑戦し、海外でも45歳までリングに上がった西沢氏も駆けつけた。現在はゴールドジムなどでトレーナーを務めている。「最後の試合前にこの合宿所で1カ月半合宿した。思い出が詰まっている」と話していた。

 嶋田トレーナーは「朝起きた時から感傷的になった」としみじみ。練習中も「さみしい」と何度もつぶやいていた。来年1月からは新潟・十日町に新設の大翔(やまと)ジムでトレーナーを続ける。東京にもジム開設プランもあり、「会長の教え通りに前進していくしかない」と話した。

 プロの11選手は大橋、三迫、ワタナベ、郡山と4ジムに移籍して現役を続ける。あと2人のトレーナーも三迫、ワタナベジムへの移籍が決まっている。

 フェザー級溜田は22日に初代日本ユースで、ジム37人目で最後の王者になった。7月には移籍先の大橋ジム近くの寮に引っ越し、練習道具を持って通っていた。「ジムに通うこともなくなるなんて。いまだに信じられない」。入門当初は2階の合宿所に入っていた時期もある。「思い出はいろいろあるが、ヨネクラ魂で上を目指していきたい」と再出発を期した。

 以前のジム内には会長の現役時代に始まり、お宝と言えるポスター、トロフィー、賞状などが多数飾られていた。26日にジム内はすでに片付けられ、まだ山積みになっていたが、各個人に返却される。減量用のストーブも10個が並んで置かれていた。まだ7人が合宿所にも住んでいるという木造2階建てのジム。貸し出す話もあったが、今後は未定となっている。ボクシング界の一時代を築いたジムがついに幕を閉じた。