ボクシング女子の世界王者が、男としてもベルトを巻く。そんな夢、可能性を打ち明けたのが元WBC女子世界フライ級王者真道ゴー(30=グリーンツダ)だ。

 31日に引退届を出すが、前日の30日に大阪市内の所属ジムで会見。「引退会見」だったが、意欲に満ちた男としての「復帰かも会見」ともなった。

 真道は幼少期から性同一性障害に悩んできた。小学生からバスケットボールにいそしみ、天理大に進学も、その悩みから1年で中退した。「生きていても楽しくない。死ぬことも考えた」。そんな時に出会ったのがボクシング。「自分にどれだけ向き合えるかをボクシングは教えてくれた。だいぶ“M”なんで、トレーニングで追い込むのが好き。ボクシングに出会っていなかったら今の自分はない」。

 しかし、長年支えてくれた女性の存在が「引退」の決断に導いた。結婚するために性別変更を決意し、今年5月にタイで子宮と乳腺を切除する性別適合手術を受けた。6月に戸籍を変更し、7月に念願の結婚。当然、女子ボクサーとしてはもうリングに上がれない。その前に性同一性障害を公言しながら、女子のリングに上がる葛藤もあった。和歌山で営む福祉関係の会社の経営に専念へ。しかし、ボクサーの血は沸き立ったままだった。

 「自分の意思が固まれば、日本では実現していないことに挑むことも。もちろん、一からプロテストから受ける覚悟です」。男子プロボクサーとして、ライセンスを得る考えだ。ただ、その実現性は見えない。前例がない。まだ男性の体になるための治療中。日本ボクシングコミッション(JBC)の承認を得られるのか。結婚したばかりの妻は猛反対…。それでも夢を捨てきれない。

 30歳の年齢もあり、1年以内には結論を下すという。グリーンツダジムの本石昌也会長は「その際は全力でサポートしたい」と話す。実現すればボクシング界だけでなく、スポーツ界に一石を投じる挑戦は間違いない。

 

 ◆真道(しんどう)ゴー 本名橋本浩(はしもと・ごう)。旧名めぐみ。1987年(昭62)7月18日、和歌山生まれ。小学校からバスケットボールを始め、天理大1年で中退しボクシングを始める。08年5月プロデビュー。13年5月にWBC女子世界フライ級王座獲得。戦績は16勝(11KO)4敗。身長167センチの右ボクサーファイター。