安心感が最大の敵!? ボクシングのWBA世界ミドル級王者村田諒太(31=帝拳)が28日、都内のジムで本格的に練習を再開した。先月22日の同級タイトル戦でアッサン・エンダム(フランス)を7回終了TKOで破ってから1カ月。来年4月に国内で予定される初防衛戦への鍵に心理面を挙げ、王者となってもハングリーさを維持するために、強敵を求めた。

 村田の顔はきれいにひげがそられていた。新王者となった先月の王座戦までは、無精ひげが精悍(せいかん)さを印象づけていたが「今日は練習再開なので」と朝にひげそりを当ててきたという。日本人の五輪金メダリストとして初の世界王者となった。試合直後から「ここからスタート」と言葉にしていたが、その気持ちはこの日も変わらない。だから「やはり安心している自分もいて、僕の中で戦わないといけない感情ですね」と口元を引き締めた。

 13年のプロ転向から14戦目で1つの目標に達した。この1カ月で周囲の称賛、環境の変化を感じる。「五輪金メダリストとして、(プロでも)失敗ではなかった」という心境が自然に湧いたという。そして、防衛とは守ることであり「守りに入るとモチベーションが難しい」と早くも心の戦いのゴングを鳴らした。

 特効薬は本人が最も自覚している。「できるだけ強い選手」だ。帝拳ジム浜田代表は「次の試合は来年4月に国内を予定している」と明言した。初防衛戦の相手は強敵こそ最良。村田は「ハングリーでいるために」守りの感情に陥らない危機感を必要とした。さらに先の標的もいる。5月に再戦がうわさされるWBAスーパー王者ゴロフキンとアルバレス。「その勝者とやりたい」と見定める。

 はた目には緩みは感じられない。祝勝会の誘いなどは多いが、必要最低限以外は断る。4月までは5カ月ほどあり「いろいろできる段階」と伸びしろを模索する姿も、十分にハングリーだ。ヒゲが伸びてきても、その姿勢は変わらないだろう。【阿部健吾】