最速タイのスピード日本王座で、4戦連続大入りに応える。日本ライトフライ級1位井上尚弥(20=大橋)が15日、横浜市内のジムでスパーリング3回を披露。25日の日本ライトフライ級タイトル戦に向け、減量も佳境の時期ながら、日本フライ級王者粉川拓也(28)を多彩なパンチで圧倒した。地元のスカイアリーナ座間が会場で、約1000人の応援団など約4000枚の前売り券は完売。22年ぶり史上5人目となるプロ4戦目での王座獲得で、凱旋(がいせん)試合を飾る。

 大橋会長の手元にも入場券は1枚もない。7月10日に前売りを開始したが、チケットぴあでは2日間で売り切れ。約4000枚が完売し、残りは当日券用の約100枚だけ。当日は金メダリスト村田のデビュー戦もある。「どうかなぁと思った」という会長の心配は無用だった。

 井上のプロ4戦目で初の地元での開催に、約1000人の応援団も駆けつける。後楽園ホールでの過去3試合も満員。井上は「注目してもらって燃えてくる。記録もかかる試合で楽しみです」と、うずうずしていた。そのエネルギーをスパーでも存分に発揮した。

 粉川は1階級上の王者で、WBC7位など全4団体で15位以内に入っている。その相手を試合10日前で圧倒した。足を使いながら、終始攻めて、再三ロープまで追い込む。多彩なパンチ、コンビネーション。前回痛めた右で強烈なストレートを打ち込んだ。

 井上も手応え十分だった。「減量中で足が止まらずに動けた。自分のペースでいけた。バッチリ仕上がりました」。大橋会長も「流さずに倒しにいったのはすごい。若さの特権。勢いがある」と絶賛した。

 今回は世界王者八重樫、暫定世界王者江藤、世界戦経験者粉川、黒田らと約90回スパーをこなした。並み居るパートナーを相手に磨きをかけた。「距離をとる自分のボクシングで、何もさせずに勝ちます」。王者田口はWBA3位と、世界ランク入りもかかる。辰吉以来のスピード王座は通過点にすぎない。【河合香】