今日5日、WBC世界フライ級王者八重樫東(31=大橋)が、プロアマ通じて126戦無敗の「怪物」ローマン・ゴンサレス(27=帝拳、ニカラグア)と激突する。4日には都内のホテルで前日計量が行われ、1回でクリア。「5、9、11回」を勝負のラウンドと位置付け、番狂わせをもくろむ。一瞬たりとも気を抜けない戦いは百も承知。すべての準備を整え、運命のリングに立つ。

 大一番のゴングを翌日に控えても、八重樫の表情には余裕があった。「ここまで来れば、いつもと同じ」。計量を終え、ゴンサレスと握手を交わすと、ジュースやゼリーなどでエネルギーを補充。「明日以降のことは何も考えていない。これまでの試合と同じように、明日地球が終わってもいいぐらいのつもりで戦う」と静かに闘志を燃やした。

 最強挑戦者攻略のポイントを「5回、9回、11回」に据える。WBCルールでは4回と8回終了時に、その回までの採点が公開される。採点を聞き、心が動く一瞬の隙を突くのと、どんな展開で迎えても自身を奮い立たせるのが狙いだ。「その3つは(ポイントを)取りにいくラウンド。『こいつまだこんなに動けるんだ』と思わせたい。5回は最初のヤマ場になる」と解説する。

 相手は約85%の驚異のKO率を誇るゴンサレス。1発を警戒しながらも、精神的な消耗戦に引きずり込めば、勝機は広がる。もつれて迎えた終盤11回に再びギアを上げ、36分間トータルで勝つ計画だ。

 下馬評の不利は動かないが、戦い抜く覚悟はできている。「自転車に乗ることと同じで、できないことをできるようにしたり、何かを成し遂げようとする時はマイナスからの方が多い。乗り越えられないものなんてない」。

 今回の試合を「集大成とは思っていない」と言い切った。何かをかけるのではなく、何かをつかみにいく。八重樫が強さを証明する時がきた。【奥山将志】