何とか間に合った。巡業を全休して懸命な治療と下半身強化に取り組んできた。番付発表後も非公開で調整。そして、初めて5日も連続で出稽古を行った。十両や軽量力士から始め、元大関琴奨菊の馬力を受け止められるまでになった。差すだけだった左も、生命線のおっつけを出せるまでに至った。前日の出稽古後に「十分にいい仕上がりになった」。自信を得て、出場を決めた。この日はようやく休養して疲れを抜いた。

 もちろん、だからといって万全になったわけではない。ただ「元々、相撲に対して一生懸命。真摯(しんし)に横綱の立場を受け止めてやってくれると思う」と師匠は期待を込める。その姿を、ラオウら北斗3兄弟がさらに後押しする。

 北斗の拳の化粧まわしを贈ったコアミックスから懸賞も、15日間通しでつくことになった。懸賞幕のデザインは北斗3兄弟。初日こそ全体の本数が多いため自らのラオウのみだが、2日目以降は太刀持ちと露払いがそれぞれ着けるケンシロウとトキもつく。横綱の計らいで、太刀持ちと露払いを務める力士にも1本ずつ懸賞が掛けられるという。「着けているだけで見えない力が湧いてくる」と感じた三つぞろいに加えて懸賞も、背中を押してくれる。

 優勝争いに絡むことが横綱の使命と言ってきた。双葉山以来80年ぶりの初優勝から3連覇に挑む夏。「世紀末覇者」を名乗ったラオウのように膝などつかず、試練の土俵を戦い抜く。【今村健人】