1月の初場所で初優勝した玉鷲(34=片男波)が、貴景勝との関脇対決を制して連敗を3で止めた。ともに得意の突き、押しで一歩も引かない展開で、意地の押し出し。2勝3敗とした。先場所まで3連敗中だった、大関とりの12歳下の相手に雪辱すると同時に、今後の自身の大関とりをアピールする好内容だった。またこの日、横綱、大関陣は2日連続の安泰となった。

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いのしし年を象徴するような、猪突(ちょとつ)猛進型の2人の対決は、玉鷲に軍配が上がった。立ち合いは頭と頭をぶつけ合い、相手より13センチ高い188センチの玉鷲は、下に潜り込まれる格好となった。上体を起こされそうになったが、下からおっつけ、もろ手で突き、挟みつけてハズ押し。前進に次ぐ前進という押し相撲の真骨頂だった。1度も引かずに制し、支度部屋では開口一番「やられる前に、やった」と振り返った。

先場所は13勝2敗で初優勝したが、貴景勝には敗れていた。もう1人、先場所で敗れていた小結御嶽海には、前日4日目に敗れて雪辱できずじまい。だからこそ、この日の朝稽古では、貴景勝対策を徹底した。若い衆に貴景勝の下から突き上げてくる立ち合いをイメージさせ、それを何度も受けた。「貴景勝はまっすぐ来るから、そこまで苦手なイメージはない」と、馬力勝負に持ち込めば勝算はあると踏んでいた。「まだ若手に負けたくない。って言い方だと年寄みたいだね」と、快勝に笑顔だった。

今場所は新たに紺色の締め込みを使っている。優勝した先場所の水色のものから変えたが「モノにはゲンが良い、悪いはない。悪いとしたら自分」と意に介さない。むしろ新たな締め込みには金色の刺しゅうで「てるむん」「えれむん」と2人の息子の名前を平仮名で記し、力をもらっている。大関とりの相手を破り、自身の大関とりをアピールした格好。「(今場所の)いい盛り上げになったかな」。意地と執念の白星で、巻き返しの自信をのぞかせた。【高田文太】