西前頭8枚目朝乃山(25=高砂)が平幕で唯一の5連勝発進を果たした。過去1勝5敗と苦手にしている東前頭10枚目輝を、右四つで寄って追い詰め、最後はすくい投げ。終盤の5連敗で勝ち越しを逃した先場所の失敗を生かし、今場所は禁酒などで体調管理を意識。三役候補として期待された大器がいよいよ本領発揮だ。序盤5日間を終えて全勝は朝乃山のほか、横綱鶴竜、関脇栃ノ心。1敗が4人と混戦の様相を呈している。

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水を得た魚のように、右四つの朝乃山が体を寄せまくった。合い口の悪さは頭にない。土俵際で耐えられたが、右ですくって鮮やかに転がした。「前に出ていたから決まった。イチかバチかだけど、取るので精いっぱいなので」と、無心でつかんだ1勝だった。

昨年の名古屋場所では11勝を挙げて敢闘賞を獲得するなど、三役候補として期待された大器が再評価されている。「立ち合いが重くなったし前へ良く出ている」と八角理事長(元横綱北勝海)。春巡業ではたびたび相四つの栃ノ心に指名されるなど、上位の重さを肌で実感してきた。巡業では「めったにないチャンスだった」と話していたが、その経験が糧になったかは「(場所が)終わってから判断したい」と、言葉を選んだ。

食あたりで失速した先場所の反省を生かす。3月の春場所では10日目時点で勝ち越しに王手をかけたが、千秋楽まで5連敗を喫し、7勝8敗で終戦。勝ち越しを逃した要因は、場所中にカキであたって体調を崩したため。場所後、師匠の高砂親方(元大関朝潮)から、体調管理の不届きを叱られ、準備への意識が変わった。その一環として場所中の禁酒を開始。「15日間毎日ある。お酒強い人はいいけど(自分は)強くないので。5連勝でもまだまだ先はある」と、息抜きよりも白星に貪欲だ。初日からの5連勝は、幕内では昨年初場所以来。「自信を持って攻めきりたい」。ポテンシャルがいよいよ開花しつつある。【佐藤礼征】