横綱稀勢の里の引退に始まり、新大関貴景勝誕生、トランプ米大統領観戦、暴力問題で十両貴ノ富士が引退など、さまざまな出来事が起きた2019年の大相撲。今年1年間、幕内を務めた全29人の力士が対象の連載「第8回日刊スポーツ大相撲大賞」は、そんな陰で生まれた好記録や珍記録を表彰する。

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年間で最も多く投げ手で白星を挙げた「最優秀投手賞」は、松鳳山(35=二所ノ関)が受賞した。5種類14勝。投げ技で12勝した横綱白鵬を上回り「横綱を何か1つでも上回れたというのは誇らしいことですね」と、胸を張った。

176センチと小柄な体格から多彩な技を繰り出すが、投げは最も好きな技だ。中学2年のときに約1年習っていた柔道でも、投げばかり狙っていたという。「投げが決まったときは死ぬほど気持ち良かったことを覚えている」。当時から変わらず、投げで重要視する点は「体の回転」。ルーツは他競技にあるのかもしれない。

決めてみたい投げ手がある。「やぐら投げです。今までも惜しいところまでいったことはあるので、そろそろ決めたい」。両まわしで相手を引きつけ、膝を相手の内股に入れて太ももに体を乗せ吊り気味に持ち上げ、振るようにして投げ落とす大技。幕内では15年九州場所7日目に、白鵬が隠岐の海を相手に決めている。「体重が重い相手に決めたい。今(の相撲界)は全体的に巨大化しているからこそ、ひっくり返すように決めたい」。幕内で2番目の年長力士となるベテランは、好奇心たっぷりに笑みを浮かべていた。【佐藤礼征】