史上最多の優勝45回など、数々の記録を打ち立てた大横綱が20年以上ともにしてきたマゲに別れを告げた。

元横綱白鵬の宮城野親方が28日、東京・両国国技館で引退、襲名披露大相撲を行った。約280人がはさみを入れた断髪式の終盤には涙ぐむ場面もあり、最後は師匠の間垣親方(元前頭竹葉山)が止めばさみを入れた。今後は部屋持ち親方として自身のように角界を引っ張る大関、横綱を育てていく意欲を示した。

   ◇   ◇   ◇

力士の象徴であるマゲを切られた宮城野親方は、しばらく土俵に額をつけた。「横綱、大関を1日でも早く作って、再びファンの皆さんの前に帰ってくるという約束。そして感謝の気持ちを込めました」。超満員の観客から大歓声を受けながら、花道へと引き揚げた。「終わったなという気持ちもありますが、体の一部がなくなったという寂しさもあります」と名残惜しんだ。

断髪式の終盤には、はさみを入れた元横綱日馬富士さんから話し掛けられると目頭をぬぐった。「日馬富士が深い言葉をくれた。『同じ土俵に戦えて、誇りに思います』と。思わずぐっときましたね」と、現役時代にしのぎを削った盟友からの言葉に感謝した。最後に師匠の間垣親方(元前頭竹葉山)が止めばさみを入れ、大銀杏(おおいちょう)を切り落とした。左右を角刈りに整髪し、「100点満点です」と満面の笑みを浮かべた。

歴代最多45回の優勝、通算1187勝、横綱在位14年。名実共に一時代を築きながら、次世代への継承も忘れなかった。最後の横綱土俵入りには太刀持ちに大関貴景勝、露払いに関脇豊昇龍を従えた。初場所優勝力士として貴景勝を選び、そして同じモンゴル出身で期待をしている若手として豊昇龍を選んだという。2人のサポートを受け、不知火型の土俵入りを堂々と披露した。

花を添えた豊昇龍は「初めてで緊張しました」。一方で、貴景勝は「あんなに近くで土俵入りを見たのは初めて。大横綱の最後に太刀持ちをやらせていただいて光栄です」と高揚感に包まれていた。節目の日を無事に全うし、後進への指導にも一層熱が入る。宮城野親方は「これからは親方としての戦いが始まる。もう関取は作りましたので、次は横綱、大関を作って、相撲界の発展のために恩返しをしたいです」と誓った。【平山連】