前日13日目に優勝争いのトップに並んでいた大関貴景勝(27=常盤山)が、痛恨の1敗を喫した。

かど番危機の新大関豊昇龍の意地の前に上手投げで転がり、10勝4敗となった。13日目に直接対決で破った前頭熱海富士が、3敗を守って再び単独トップ。他力本願とはなるが、4度目の優勝には、千秋楽の関脇大栄翔との4敗対決に勝つことが絶対条件となった。他に高安、北青鵬の前頭2人も4敗で優勝の可能性を残した。

最後に落とし穴が待っていた。貴景勝は突いて、押して、じりじりと豊昇龍を後退させた。だが相手も負ければ来場所かど番の新大関。負けられない意地で、左に回り込まれながら右上手を取られた。前に出続けた貴景勝の推進力を利用され、上手投げに転がった。取組前までの対戦成績は7勝2敗。合口は悪くなかった。結びの一番の独特な雰囲気と、先に熱海富士が勝っていた状況から、無意識に硬さが出たようだ。

「負けなので、それが全て。一生懸命、集中してやった」。今場所4度目の黒星も、変わらず言い訳はしなかった。白星目前まで迫りながらの逆転負け。土俵際の詰めが悔やまれる展開も「それは結果論。土俵の上でできなかったら…。終わってから言うことはできる。『できなかった』イコール弱い。強くなるしかない」と、自らを責めた。

この日、3人いる付け人のうち、2人が勝ち越しを決めた。残る1人は早々に勝ち越しを決めており、4度目の優勝に向け、お膳立ては整っていたが負けた。帰り際、同じ西の支度部屋で、仲の良い大栄翔を祝福して笑顔を見せた。引きずる様子はない。その1時間後、優勝を懸けた千秋楽の相手が大栄翔に決定。昨日の友は今日の敵。これまで以上に私情を捨てて勝ちにいく。【高田文太】