3度目の綱とりに挑む大関貴景勝(27=常盤山)が序盤で痛い星を落とした。初日から3連敗の西前頭2枚目・明生を攻め込みながら、土俵際で逆転されて寄り切られた。先場所優勝も11勝で、熱海富士との優勝決定戦での立ち合い変化もあり、横綱昇進には高いハードルが設定されていた。悲願へ早くも負けられない状況に追い込まれた。霧島も高安に突き落とされ、大関陣では豊昇龍だけが無傷の4連勝を飾った。

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3度目の綱とりは早くも土俵際に詰められた。取組後の支度部屋、囲み取材の輪が解けた後も貴景勝はしばらく座り込んで動けなかった。4日目に喫した1敗の重みは、だれよりもずっしりと感じていた。

「いつも通りでした」というが、初日から3連敗の平幕明生にしてやられた。立ち合いから攻め込むが、攻めきれない。土俵際で残され、体勢を入れ替えられると最後はあっさり寄り切られた。「まあ、負けるときは、そういうことだと思う」。攻めきれなかった相撲を悔やんだ。

先場所は優勝も11勝4敗に終わった。さらに優勝決定戦で熱海富士を相手に立ち合い変化が議論を生み、綱とりへのハードルが上がった。貴景勝もそれは理解した上で大目標に挑む。場所前には「自分が一生懸命相撲をとることで勝っていきたい。その先に最後の番付(=横綱)があると思う。毎回、(綱とりのチャンスは)最後だと思っている」と話していた。

可能性ある限り戦い続けるしかない。残り全勝は必須。「しっかり準備してやるだけなんで。また明日も相撲があるし、毎日やることは変わらない。変わらず一生懸命やるだけです」。

今場所も横綱照ノ富士は休場。3場所連続の休場で「横綱待望論」は強い。その期待にこたえたい思いは当然、ある。場所前の取材で「1回目の綱とりはあせりが大きかった。2度目はチャンスがもうないと思うくらい。今回は今回でしっかり、新しい気持ちで臨みたい」と言った。立ちはだかる分厚いハードル。それを乗り越えてこそ、角界の頂点に立つ価値がある。【実藤健一】

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