番付上位の意地見せた。大関霧島(27=陸奥)が、2敗同士の直接対決を制し、4場所ぶり2度目の優勝に王手。結びで西前頭8枚目の熱海富士を寄り切り、今場所初の単独トップに躍り出た。来年4月に定年を迎える師匠の陸奥親方(元大関霧島)と臨む最後の九州場所。師匠のご当所場所で優勝すれば、来年1月の初場所は綱とりもかかる。春場所で初優勝し、夏場所後の大関昇進など実り多き1年。有終の美で飾るべく、千秋楽で大関貴景勝と対戦する。

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霧島に気迫がみなぎった。熱海富士との熱戦を制して懸賞金を大事そうに受け取る姿が、この一番に懸ける思いの強さを物語る。支度部屋に引き揚げると「よし!」という言葉が漏れ、「大関として平幕に負けられない気持ちもあった。いろいろ相手の相撲のことを考えて土俵に上がった。勝ちにいこうと思ったら変な投げとかにいっていた。勝負に徹することができた」と言葉も力強かった。

勝てば優勝が近づく2敗同士の直接対決。大一番でも、冷静さを失わない。仕切り線で見合った時から優位に立った。目を合わせようとしない熱海富士の緊張感を察知し、「自分の相撲を取る」ことだけに集中。立ち合いで素早く右を差し、左のおっつけから左もねじ込んだ。もろ差しのまま攻勢をかけ、土俵際での警戒も怠らない。万全の寄り切りで12勝目を挙げ、「最後まで腰を下ろして出られた」。単独トップに立ち、今年春場所に続く優勝へ大きく前進した。

来年4月に定年を迎える師匠の陸奥親方(元大関霧島)と臨む最後の九州場所。自身にとっては初めて霧島のしこ名で臨む九州場所でもある。新旧霧島がタッグを組む最初で最後の“ご当地場所”とあって、館内の声援の大きさも実感する。11日目からは酒造大手の霧島酒造から贈られた化粧まわしを着けて土俵入りを行い、今やしこ名と同じ鹿児島・霧島市は「地元みたいで、あちこちから声をもらう」と第2の故郷とすら感じるほど愛着が湧いている。

期待に応えるべく積み重ねてきた白星は、年間最多勝を確定させる61勝に到達した。それでも手綱を緩めることはない。「あと一番があるので、その後に喜びたい」。最後まで自分の相撲を貫いた先に、2度目の賜杯が待っている。【平山連】