1人横綱が窮地に陥った。先場所優勝の横綱照ノ富士(32=伊勢ケ浜)が、3日連続で金星を配給した。西前頭3枚目の隆の勝に寄り切られて痛恨の4敗目。横綱昇進以来初めて相撲を取っての3連敗となった。2場所連続の賜杯で目標にしてきた10度目の優勝を狙っていたが、6連勝の大の里、尊富士との差は4に広がった。

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完敗だった。横綱が平幕相手に3日連続で敗れる異常事態。照ノ富士の、どっしりと受けて立つ横綱相撲は影を潜めた。明生、王鵬に連敗して迎えた6日目。隆の勝にもろ差しのまま出られて、冷静さを欠いた。強引な投げを打って体勢を崩したところを押し込まれ、なすすべなく寄り切られて4敗目。ぼうぜん自失のまま支度部屋へと引き揚げた。付け人が制する形で取組後の取材にも応じず、無言のまま会場を後にした。

何かがおかしい。幕内後半戦の粂川審判長(元小結琴稲妻)も「気迫はいつもと変わらないような感じはしましたけど、厳しいですね。出てきたからには、もうちょっと力を出すと思っていたけど。全然ダメ」と厳しい言葉を並べた。3日連続の金星配給は、19年秋場所の横綱鶴竜(現・音羽山親方)以来4年半ぶり。年6場所制となった1958年(昭33)以降では9人目という不名誉な記録に名を刻んだ。

3場所休場明けだった1月の初場所は、琴ノ若との決定戦を制し、13勝2敗で4場所ぶり9度目の優勝を飾った。しかし、この影響は大きかった。今場所の番付会見では「まずは場所の疲労をとること」と先場所の反動に言及。残る疲れのためか、この場所は序盤から精彩を欠く内容の連続で星も伸びてこない。不戦勝を含まずに初日から6日目までに4敗は横綱昇進以降では初めてとなった。休場すら現実味を帯びる深刻な状況。1人横綱としての意地をみせられるか。【平山連】

 

○…隆の勝(29=常盤山)が、横綱照ノ富士を相手に22年5月場所以来2つ目の金星を挙げた。「とにかく足を出そう」と中に入り、もろ差しで寄り切り。「うれしいですよ。やっぱり」とかみしめた。3日目から3連敗中だったこともあり「胸を借りるつもりで余計なことを考えず、開き直っていけた。自信になった」。無欲で大仕事をやってのけ「気分良いまま、明日も臨めれば」と笑顔を見せた。