重圧を乗り越えた。横綱豊昇龍(25=立浪)が、負ければ全て金星配給の3連敗、2場所連続の途中休場に追い込まれかねない危機だった豪ノ山戦を上手出し投げ。苦しみながらも13秒7で制した。連敗した前日4日目の取組後、歴代最多の優勝45度を誇る宮城野親方(元横綱白鵬)と、師匠の立浪親方(元小結旭豊)から助言を受けて開眼。吹っ切れた様子で、3勝2敗で迎える中盤戦、6日目からの巻き返しを誓った。
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新しい景色が見えた。重圧も、緊張もあった。それでも歯を食いしばり、豊昇龍は3日ぶりに白星をつかんだ。豪ノ山得意の突き、押しにもひるまず、前に出た。約10秒の防戦の流れから一転、距離を詰めて右を差すと、左上手を引いて主導権。そのまま左から投げて仕留めた。辛勝。それでも相手の力を十二分に出させた後、自らの形に持ち込んだ。まだ不格好かもしれないが、昇進2場所目で横綱相撲に到達。「集中してやった」と胸を張った。
取組後は、まさに新しい景色が広がっていた。横綱しか座ることを許されていない、支度部屋の最も奥に陣取り、風呂上がりにまげを直した。両膝が悪かった1代前の横綱照ノ富士は、取組後は風呂に近い支度部屋の出入り口付近に陣取っていた。その光景しか知らなかったが、この日は一転「せっかく、ここ(奥)に座れるようになった。ここでずっと座っていく」。かつて白鵬の定位置だった東の支度部屋の奥こそ、自らの居場所と言い聞かせた。
その白鵬の宮城野親方が前日の取組後、風呂場にやってきた。「横綱になるのは難しい。横綱になったら勝つのが難しい。自分の相撲を取れ」。歴代最も優勝も、白星も多い大横綱でも「横綱」の地位の重圧と闘っていたと知った。ほどなくして部屋に戻ると師匠に「好きなようにやれ」と言われた。この日の取組後、豊昇龍は「何を考えていたんだろうと思った」と、無意識に自分を追い込んでいたと明かした。「(肩の力が)抜けた」と続け、3日ぶりに支度部屋で笑った。
取組を見た宮城野親方は「いい緊張感だ」と話し、手でOKマークをつくって合格点をつけた。同親方は2日連続で風呂場を訪れて「それでいいんだ」と、直接、豊昇龍に伝えた。豊昇龍は「明日(6日目)から好きなことをやりたい」。自信を取り戻した番付最上位が、遅ればせながら逆襲を宣言した。【高田文太】

