AKB48グループの方向性が最近、変わりつつある。昨年12月からの約1カ月間、立て続けにいくつかのステージを見て、そう感じることが多くなった。具体的には、より実力派路線にシフトしようという動きだ。

昨年12月、「AKB48グループ紅白対抗歌合戦」が行われた。今回で8回目という恒例イベントは近年、内容のマンネリ化が否めず、個人的には盛り上がりに欠けるイベントという印象だった。ところが、今回は違った。全曲生演奏なのはもちろん、人選も人気メンバー優先のこれまでとは違い、より多くの実力者たちがそろった。過去に歌で実績を残したメンバーに加え、若手でも歌に定評があるメンバーが多く出演。活動12年目の柏木由紀(27)が、1年目のルーキー矢作萌夏(16)とデュエットするという、今まででは考えられなかったコラボも実現した。

「アメイジング・グレイス」を歌ったのは、AKB48チーム8の歌田初夏(16)と立仙愛理(19)。ともに、選抜経験があるわけでもなく、まさに知る人ぞ知る存在だったが、見事なゴスペルを披露してファンを驚かせた。3時間半近いイベントだったが、一切飽きさせることはなく、ただただ歌声に酔いしれることができた。

「年の瀬にいいものを見せてもらったな」と感心していたら、今度は年明け11日に「AKB48グループ歌唱力No・1決定戦」というイベントが開催された。こちらは歌が得意なメンバー20人が集結、バンドの演奏に乗せてソロ曲で勝負する、コンテスト形式のイベントだった。驚きの発見は、いくつもあった。NMB48山崎亜美瑠(17)はaikoの「カブトムシ」を熱唱し、オリジナル顔負けの歌声を披露。山崎は矢作と同期加入で、まだ全国区には遠いが、大きな存在アピールになったに違いない。

そして優勝したSKE48野島樺乃(17)は、ミュージカル「リトル・マーメイド」の名曲で、曲中にせりふもある「パート・オブ・ユア・ワールド」を持ってくる大胆な選曲で、観客と審査員の心をつかんだ。小学生のころから合唱団で鍛えた美しい歌声も相まって、文句なしの歌唱女王となった。

AKB48グループはいつのころからか、歌手を志望して入ってくるメンバーが少なくなってしまったような気がする。実力以上に、キャラクターを確立させなければ、選抜など、目立つポジションに立てない可能性が高いことも影響していることは間違いないだろう。だからこそ、最近の実力派路線は大賛成。思わぬメンバーが覚醒したり、注目されることを願っている。