ジェイソン・ボーンのシリーズなど、スパイ系アクションが好きという方にぜひともお薦めしたいのが米映画「マイル22」(18日公開)だ。
主演のマーク・ウォルバーグとともに実録3作品「ローン・サバイバー」「バーニング・オーシャン」「パトリオット・デイ」に取り組んできたピーター・バーグ監督が「ただただ楽しいアクション映画」を目指している。
ウォルバークふんするエージェント、シルバが率いるのはCIAの特命ユニット「オーバーウオッチ」。法の枠を超えたミッション発動とともに米政府から解任され、その存在さえ否定される。「ミッション・インポッシブル」の「当局はいっさい関知しない」のパターンに倣った影の存在である。
冒頭は米国内にあるロシア情報機関のセーフハウスへの急襲作戦。そして本筋となるのが東南アジア某国での情報源男性の移送作戦だ。この人物は放射性物質セシウムの行方を握っている。物語の進行とともに実はこの2つが裏でつながっていることが明らかになり、アクションと心理戦の緊張は思いっきり高まっていく。
冒頭作戦では閑静な住宅地の裏側で進行する諜報(ちょうほう)戦のひりひりするような緊張を描き、東南アジアに舞台を移してからはまるで市街戦のようにアクション全開。メリハリが利いている。「テッド」(12年)に代表される脱力系作品でもいい味を出すウォルバーグだが、やっぱりこのテのアクションが好きなのだろう。苦悩の表情からガンアクションの鋭い目付きまで、生き生きと振れ幅を広げている。
移送距離22マイル(35・4キロ)に限定された空間に、難敵や障害がゲームのように次々に放り込まれる。
バーグ監督はCIAや軍出身の知人が多いようだし、脚本のリー・カーペンターの父親は元特殊部隊員という。「24」のような時々刻々の進行で、次の一手には必ず驚きがあり、リアリティーがある。
ウォルバーグふんするシルバがピタリと腕になじませたヘッケラー&コッホ社のアサルトライフルはスパイ小説でもおなじみの銃。他のメンバーもそれぞれの役割に適した装備がきっちりと割り振られている。
そしてキーマンとなる情報源男性を演じるのがインドネシア出身のイコ・ウワイス。「ザ・レイド」(11年)などで知られる同国のアクション・スターだ。彼のキレのいい格闘シーンにも息をのまされる。
オーバーウオッチ部隊を遠隔バックアップする司令室の長にくせ者ジョン・マルコビッチがふんして、「静」の場面も飽きさせない。バーグ監督の狙い通り「ただただ楽しい」。
95分に絞りきった隙のない娯楽作品だ。
【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)