アメコミに精通しているわけではないので、映画が初見というキャラクターは少なくない。

3年前に「ヴェノム」の設定を聞いたときに頭に浮かんだのは「寄生獣」(岩明均作のコミック)だが、実際に映画を見ると、エイリアンをひと回りごつくしたような造形に想像以上のインパクトがあった。

が、クリーチャーものの宿命として、一度全体像をさらしてしまうと、どうしても衝撃は薄れていく。というわけで、続編となる「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」(12月3日公開)には、宿主エディと彼に寄生した地球外生命体ヴェノムの夫婦げんかのような対立、さらには強敵カーネイジの登場という新味が盛り込まれている。

敏腕記者エディ(トム・ハーディ)は利己的なところがあるが、正義感は人一倍。彼に寄生し、変身後は超人的な能力を発揮するヴェノムの好物は人間。「悪人以外は食べない」という、それでも相当危うい条件で「2人」は折り合いを付けている。

因縁のあった連続殺人鬼の死刑囚クレタス(ウディ・ハレルソン)をインタビューしたエディは、ふいに彼に腕をかまれてしまう。ヴェノムを生み出す宇宙生命体の血を取り込んだクレタスの体の中で凶暴なカーネイジが覚醒。クレタスの恋人で破壊的な「声」を持つシュリーク(ナオミ・ハリス)も参戦して、世界は危機的状況に…。

食べ放題のカーネイジに対して食事制限付きのヴェノム、そのストレスでエディともなかなか息が合わない。さらに敵にはシュリークという助っ人もいて…と不利な条件をいかに覆すのか。同じ「決め技」を持った両者はいかに決着をつけるのか。

「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの脇役で俳優としてもポイントの高い好演をしてきたアンディ・サーキス監督は、巧みにひねりを入れ、ヒーローものならではの見どころも満載だ。

ハーディは今作では原案にも参加。巧者ハレルソンや「ムーンライト」(16年)のナオミ・ハリスと配役の妙もある。エディの元恋人役のミシェル・ウィリアムズ、その現在のお相手のリード・スコットもそれぞれにいい味を出して、ドラマ部分も楽しい。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)