70歳のリーアム・ニーソンが新作「ブラックライト」(公開中)でも裏稼業の男を演じ、アクションを披露している。

今回の設定はちょっと複雑だ。FBI長官(ガブリエル・ロビンソン)から特命を受けた男は、極秘活動をしている潜入捜査官たちからは「フィクサー」と呼ばれている。潜入先で捜査官の正体がばれ、命の危険が生じたときに彼らを救い出すのが仕事で、その過程ではイリーガルな行動を取ることもある。

長官直属とはいえ、公には存在を否定されるグレーな仕事というわけだ。

そんな男、ブロックは救出した潜入捜査官ダスティ(テイラー・ジョン・スミス)から、FBI内に「オペレーションU」という極秘セクションがあることを聞かされる。不都合な政治家や民間人を事故死に見せかけて暗殺するプログラムを担っているというのだ。

最初は信じなかったブロックも、ダスティが殺され、彼が情報をリークした記者(エミー・レイヴァー・ランプマン)にも危機が迫るに至り、独自に調査に乗り出す。が、敵は巨大で家族を危険にさらすことになってしまい…。

今回メガホンを取ったのは「ファイナル・プラン」(20年)以来のタッグとなるマーク・ウィリアムズ監督。前作もそうだったが、今回も引退間際。孫までいる設定で、年齢に合わせた抑制的なアクションにはリアリティーがある。息は上がってもニーソンは走るし、格闘シーンには熟練の強みを生かす動きが無理なく折り込まれている。

5年前の来日時に当時65歳のニーソンにインタビューしたことがある。

「もともとアクション俳優志望だったわけじゃないけど、スタントの担当者と動き方を練ったり、リハーサルをやるのは楽しくて仕方が無い。今でも格闘シーンは、僕にとって映画出演の一番の楽しみだから」

そんな思いがあるからだろう。今回のアクションシーンにも不自然さは感じない。

一方で、「銃規制」の立場も明確にしていた。

「数日前の話だけど、その作品の銃の使い方に疑問を持って出演を辞退したばかりなんだ。アクション映画に銃は欠かせないけれど、撃つにはやむにやまれない状況がなければいけないと思っている」

「96時間」(08年)以来、ニーソンのガン・アクションには必ず「ためらい」が感じられる。それが一貫した独特のキャラクターを立てる一因になっている。

そして今回も、いちずなニーソンは満身創痍(そうい)で真相に行き着く。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)