「二匹目のどじょう」があまりいい意味に使われないからだろうか、日本ではヒット作の続編にどこか後ろめたい感じを漂わせる宣伝マンも時々いる。

最近でも「新感染-」を2作目で堂々とグレードアップした韓国は対照的で、「THE WITCH 魔女」(18年)に続く「--増殖-」(26日公開)では思いっきり風呂敷を広げて、「エイリアン2」や「ターミネーター2」をほうふつとさせる。

見ているだけで凍えそうな厳寒の大自然の中を、血まみれのボロをまとった少女がはだしで歩いている。足取りは意外なほどしっかりしていて、この冒頭シーンだけで、少女がただ者ではないことが分かる。

遺伝子操作によって「超人的な暗殺者」を生み出している秘密の研究所「アーク」が襲撃され、そこで1人生き残ったのがこの少女(シン・シア)だった。

このアークに国家機関が絡み、善良な人々に助けられて人間味を持ち始めた少女を巡ってし烈な戦いを繰り広げる展開に、「ボーン・アイデンティティー」(02年)を皮切りにしたジェイソン・ボーンとトレッドストーンのやりとりを思い出す。そこにマーベルコミックのような超人世界を加えたところがこのシリーズのミソである。

前作に続いてメガホンを取ったパク・フンジョン監督は、ドラマ部分をていねいに撮って少女を囲む人々の人情を浮き彫りにしながら、登場する「超人」たちのレベルを段階的に上げていく演出で飽きさせない。

徐々に覚醒していく少女の超能力はどこまでグレードアップしていくのか。ハリウッドにひけを取らない特殊効果で、しっかりと魅せる。フンジョン監督が1408人の応募者の中から選んだシン・シアの純朴な雰囲気にも引き込まれる。

撮影時24歳の彼女は「この世から隔離されて生きて来たので、感情表現を持たないんです。表情の変化を大きくつけられないので、目で多くを物語るように努力をしました」と、絶えず鏡とセルフカメラでチェックしながら「少女の表情」を作ったという。

前作のヒロイン、キム・ダミが後半に登場する最強超人グループのリーダー的存在を演じ、しっかりと存在感を示している。宿命を背負った異色のヒロイン役はインパクトがある。前作後にこのダミがドラマ「梨泰院クラス」(20年)で一気に人気者になったことを考えれば、好演シン・シアのブレークも時間の問題かもしれない。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)