映画やテレビの脚本家約1万1500人でつくる全米脚本家組合(WGA)が2日、15年ぶりとなる大規模なストライキに突入し、映画の都ハリウッドを抱えるここロサンゼルス(LA)では経済活動への影響が懸念されています。

2007年から08年にかけて行われた前回のストは100日続き、映画やテレビの制作が中断されたことで多数の失業者が出るなど大きな混乱が生じました。今回も長期化すれば映画産業に依存するLAでは前回の30億ドルともいわれる経済損失を上回る影響が出る可能性があると、ロサンゼルス・タイムズ紙は伝えています。

ロサンゼルスでのWGAのデモの様子(AP)
ロサンゼルスでのWGAのデモの様子(AP)

交渉が難航している背景には、映画やテレビ番組の視聴方法がこの数年で急速に変わったことがあげられています。ストリーミングが台頭する中でこれまでの伝統的なビジネスモデルが通用しなくなり、WGAが求める待遇改善にスタジオ側がどこまで応じられるのか我慢比べになると予想されています。問題は賃金の引上げだけでなく、脚本家にとって将来自分たちの職業が奪われるかもしれない人工知能(AI)の使用規制という大きな課題も抱えており、話し合いが難航することは必須で、長期化は避けられないとの見方が強まっています。

即座にテレビ各局は深夜に放送するトーク番組の製作を中止し、生放送のコメディー番組サタデー・ナイト・ライブも中止されています。一方で、女優ドリュー・バリモアやシンシア・ニクソンらWGAへの支持を表明するセレブもたくさんいます。

ドリュー・バリモア(2003年6月撮影)
ドリュー・バリモア(2003年6月撮影)

ドリュー・バリモアは、WGAへの支持を表明するため、7日に開催された音楽専門局MTVが主催するMTVムービー&TVアワードの司会を降板すると発表。「解決策が見つかるまで、家から見ることを選びます。皆さんも私に加わってくれることを願っています」とコメントを発表。授賞式は予定通り行われたものの、バリモアをはじめ何人かが出演をボイコットしたことから生中継することができず、事前収録した映像を使用しての開催となりました。

映画化もされた大ヒットドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」のミランダ役で知られるニクソンは、ニューヨーク・マンハッタンにあるネットフリックスのオフィスの前で行われた抗議デモに参加。「脚本家の何人かは私の友人で、彼らはヒーロー。脚本家がいなければ、テレビも映画も作れない」とメディアの取材で話し、脚本家への連帯感を示しています。

6日の放送が中止された「サタデー・ナイト・ライブ」で知られるコメディアンのピート・デヴィッドソンは5日、ニューヨークでデモをするWGA会員をサポートするため、大量のピザのボックスを抱えて登場。ピザを差し入れして会員を勇気づけたほか、女優マリッサ・ジャレット・ウィノカーと一緒にプラカードを手にする姿もキャッチされています。

14年に最終回を迎えたトーク番組「ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・ジェイ・レノ」などで知られるジェイ・レノは、LA郊外バーバンクでストライキ運動をする会員にドーナツを差し入れ。デニムのシャツとジーンズ姿で車から降りて会員をねぎらったレノに、「ありがとう」「愛している」と歓喜する会員の様子が報じられています。

今年のアカデミー賞を席巻した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」でメガホンを取った監督コンビ、ダニエルズのダニエル・クワン監督もインスタグラムを更新し、「ライターは業界全体の基盤の一つ。今、一緒に立ち上がらなければ、全てが崩れるのは時間の問題」とコメントを発表して、支持を表明。他にもロブ・ロウやフランシス・フィッシャー、ジョシュ・ギャッドをはじめ、多くの俳優や女優たちがプラカードを手に各地のスタジオ前で連日行われている抗議活動に参加しており、WGA支持の輪が広がっています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)