唯一のミュージカル誌である「月刊ミュージカル」最新号で2015年のベストミュージカルが発表されました。演劇評論家、演劇記者の投票で決定したもので、私も投票しました。

 初演作品を対象にしたベストテンの1位は劇団四季「アラジン」で、2位「メンフィス」、3位「デスノート」、4位「星逢一夜」、5位「ライムライト」、6位「HEAD UP!」、7位「タイタニック」、8位「パッション」、9位「TOP HAT」、10位「1789」。宝塚歌劇団作品は4位、9位、10位に3作入りました。

 再演作品は、松本幸四郎主演「ラ・マンチャの男」がトップでした。

 男優は1位幸四郎、2位「エリザベート」の井上芳雄、3位「メンフィス」の山本耕史、4位に滝山久志、5位に市村正親と鈴木壮麻、7位に城田優と中川晃教、9位石丸幹二、10位屋良朝幸。滝山は「アラジン」のジーニー役で一躍注目された俳優で、ちなみに市村、鈴木、石丸ともに四季出身です。

 女優部門は、1位「エリザベート」の花總まり、2位「メンフィス」の浜田めぐみ、3位が霧矢大夢とシルビア・グラブ。5位は安蘭けい・涼風真世・北翔海莉、8位高畑充希、9位湖月わたる、10位早霧せいな。宝塚勢はOGが花總ら5人、現役は2人と、ベスト10の7人を占めました。

 私は初演部門で「アラジン」、再演で「ラ・マンチャの男」、男優で幸四郎、女優で浜田を1位に推しました。「アラジン」はエンターテインメントに徹した舞台で、滝山をはじめ四季俳優陣の歌、ダンスが圧倒的でした。2位以下を大きく引き離したのも当然の結果です。「ラ・マンチャの男」はミュージカル草創期の1969年に初演され、幸四郎が主演し続けた最高峰の作品です。男優部門も幸四郎が1位ですが、昨年の芸術祭大賞も受賞しました。浜田は歌唱力に磨きがかかり、昨年の芸術選奨文部大臣賞に決まりました。

 1978年、森繁久弥「屋根の上のヴァイオリン弾き」を帝劇2階の最後方の席で見て以来、ミュージカルを見続け、毎年のようにブロードウェーに見に行きますが、日本のレベルも確実に上がっています。【林尚之】