第45回菊田一夫演劇賞の受賞者がこのほど発表され、堂本光一さん(41)が演劇大賞に選ばれました。受賞理由は、00年の初演から20年間にわたり舞台「SHOCK」をけん引してきた功績が高く評価されたのです。実は07年度にも「SHOCK」の出演者・スタッフ一同に対して大賞が贈られたのですが、今回は光一さん1人が対象でした。

菊田演劇賞は、「君の名は」「放浪記」などで知られる劇作家菊田一夫さんの功績を記念して、75年に創設された演劇賞で、66年に創設された紀伊国屋演劇賞と並び、伝統と権威のある賞です。大賞は過去に国民栄誉賞も受けた森繁久弥さん、長谷川一夫さん、森光子さんをはじめ、山田五十鈴さん、松本幸四郎(現松本白鸚)さん、三谷幸喜さん、大竹しのぶさんと、そうそうたる人たちが受賞しており、光一さんの受賞は、15年に「エリザベート」の花總まりさんの42歳を抜いて、最年少の受賞となります。

今回の「SHOCK」は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2月28日から公演中止となりましたが、演出が一部で一新されていました。初演以来、演出・プロデューサーとして支えてきたジャニー喜多川さんが亡くなり、これまでも演出をしていた光一さんが演出家として前面に出てきました。そして、3月20日から公演再開の予定だったのが、中止となったのも、光一さんの意向が強かったそうです。その理由の1つに、米国からの帰国要請を受けた黒人ダンサー4人が公演半ばで帰国することになったことがあります。4人は重要なダンスパートを占めており、それが抜けると、それまでの舞台の完成度が保てないという判断もあったようです。

それだけ、光一さんは「SHOCK」を愛し、そのクオリティーを維持することに細心の注意を払っているのです。それは出演者のアンサンブルを大切にしていることにもつながります。20年続いている舞台ですが、共演するダンサーたちの顔触れはあまり変わらず、そのレベルも上演を重ねるにつれて、上がっているように感じています。

受賞のコメントでも、光一さんは「足を運んでくださる多くのお客様のおかげはもちろんのこと、共演者や陰ながら支えてくれるスタッフなしでは20年という年月を続けることは到底できません」と感謝しています。今回の公演で上演回数1800回を達成する予定でしたが、これは次回公演に持ち越しとなりました。1800回を達成すれば、1900回、2000回、そして、5月9日に生誕100年を迎えた森光子さん「放浪記」が持つ、単独主演で国内最多記録となる2017回が見えてきます。今回の大賞受賞は、大記録に向けて、大きな追い風になるでしょう。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)