人気アイドルグループ「V6」が11月1日で解散し、森田剛(42)がジャニーズ事務所を退所することが発表されました。

ジャニーズ事務所の公式ホームページに掲載された解散に至る報告で、昨年のデビュー25周年に向けてメンバー6人が話し合う中で、森田が「これからの人生、ジャニーズ事務所を離れた環境で役者としてチャレンジしたい」と発言したという記述がありました。そこには、俳優森田剛としての覚悟とプライドを読み取ることができました。

ここ十数年、森田の主演舞台をほとんど見てきましたが、従来のアイドル主演の舞台とは異なる、真剣勝負のすごみをいつも感じてきました。08年のいのうえひでのり演出「IZO」では生きるために人を斬り続ける下級武士、10年の蜷川幸雄演出「血は立ったまま眠っている」では心に葛藤と怒りを抱くテロリスト、11年の宮本亞門演出「金閣寺」では周囲から阻害され金閣寺に火をつける青年僧など、いずれも格好良くはない、難しい役どころに果敢に挑んでは、しっかりと結果を残してきました。

蜷川さんは「ひねくれて隅っこにいるような印象があった。野ネズミのようなね。でも、それがよかった。一を言えば百ぐらいは答えが返ってくる」と森田を高く評価し、13年に演出した舞台「祈りと怪物」でも起用している。そして、「金閣寺」で一緒にニューヨーク公演を果たした宮本さんも「彼には人にどう見られるかとか、人にどう見せたいとかがない。本当に舞台に存在している」と絶賛していた。

そのほか、14年にロンドン、ブロードウェーで大ヒットした「夜中に犬に起こった奇妙な事件」、20年には英国を代表する劇作家サイモン・スティーヴンスの世界初演となる舞台「FORTUNE」に主演している。ここ数年、俳優としての主戦場はドラマや映画ではなく、舞台になっていた。

舞台を中心に活躍するジャニーズの先輩と言えば、昨年も「リチャード二世」などに出演して紀伊国屋演劇賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した岡本健一(51)がいるけれど、森田は事務所に残らず、外に出て、俳優として活動する道を選んだ。40代に入って、重い決断を下した森田の今後の舞台に期待したいと思います。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)