宮崎駿監督のアニメ映画「となりのトトロ」(1988年公開)が世界で初めて舞台化されることが発表された。それだけでも驚いたけれど、日本ではなく英国の名門劇団「ロイヤル・シェークスピア・カンパニー(RSC)」が手掛けることには二重の驚きがあった。

RSCはシェークスピアが生まれた英国ストラトフォード・アポン・エイボンを拠点とし、舞台や映画で活躍する数々の名優を輩出している。名前通り、シェークスピア作品を上演する一方で、85年に世界的な大ヒットミュージカル「レ・ミゼラブル」がロンドンで初演された時は制作にかかわり、児童文学作品をもとにしたミュージカル「マチルダ」を上演するなど、多彩な活動でも知られている。

日本でも何度も来日公演を行っており、20年にも公演を予定していたけれど、コロナ禍で中止となっていた。また、演出家の故蜷川幸雄氏もRSCに招かれて「ペール・ギュント」「リア王」を演出しており、「リア王」には真田広之が出演している。

「となりのトトロ」は今年10月から来年1月まで上演予定だけれど、上演場所となるバービカン劇場はかつてRSCの本拠だった。蜷川氏は英国で20回ほど公演を行っているが、バービカン劇場がもっとも多かった。真田や藤原竜也が主演した「ハムレット」をはじめ、尾上菊五郎、菊之助らが出演した歌舞伎版「NINAGAWA十二夜」や「NINAGAWAマクベス」、井上ひさし作「ムサシ」、村上春樹原作「海辺のカフカ」などを上演している。

日本でも今年はアニメ映画の舞台化がめじろ押し。「となりのトトロ」と同じジブリ作品では、帝劇で「千と千尋の神隠し」が上演され、7月には歌舞伎座で「風の谷のナウシカ」が再演される。細田守監督「バケモノの子」も劇団四季によるミュージカル版が4月30日に幕を開けた。

気になるのは「となりのトトロ」の日本上演はあるのかということ。今回のエグゼティブ・プロデューサーは同映画の音楽を担当した久石譲氏が務め、「最初から日本語で舞台化したら、映画とかぶってくる。ならば外国でやったらどうかと考えました」とRSCで舞台化する理由を明かしている。もともとRSCが「となりのトトロ」の舞台化に熱心だったという。

そういえば、「もののけ姫」も英国の劇団で舞台化され、日本でも上演されたことがある。今回は日本テレビが共同制作に入っている。ロンドン発の「となりのトトロ」が日本に上陸する日を待ちたいと思います。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)