第1作「ジュラシック・パーク」から25年を数えるが、巨大恐竜のリアルな姿は鮮明に覚えている。

 実寸大で再現し、生き物のように動かすアニマトロニクスと呼ばれる技術。2作目までを監督、以降製作総指揮にまわったスティーブン・スピルバーグ氏は、巨大生物を目の当たりにした人間の驚きにとことんこだわっている。そこに「実物」がいるのか、いないのか。精緻な合成でも拭えない微妙な違和感を排するため、恐竜の再現に湯水のように製作費をつぎ込んだ。

 通算5作目の今回も、鎮静剤を打たれながら微妙に動くティラノサウルスへの接近シーンなど、ならではの緊迫感に満ちている。

 少年の心の闇を描いた「怪物はささやく」(16年)のJ・A・バヨナ監督はデリケートな味付けを加えた。遺伝子実験で誕生した「インドラプトル」のウロコはわずかに剥離し、人間の都合で生み出された「怪物」の悲しさが伝わる。

 火山噴火で恐竜が逃げまどう最大の見せ場では、島に取り残された巨体に哀れが漂う。生き残った恐竜や遺伝子のカプセル。隔離から人間社会に紛れ込み、第6作への布石がしっかり打たれている。【相原斎】

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